第62.5話(第123.5話) ガールズトーク
星団連合軍直属の軍学校、ノルデン・トロイメン学園。
厳しい訓練や眠たくなる座学を終え、食堂で夕食を済ませて。
汗を流すとともに一日の疲れも癒すように風呂に入り、眠る準備が整った所で。
女子寮の一室で、鳴鳥とメリエルとマイアは会話に花を咲かせていた。
年頃の女の子が集まれば話題は尽きず、流行りのものから美味しいお菓子などの話題に、芸能人の話と多岐にわたる。
だがメリエルとマイアの場合は恋愛の話が……所謂恋バナが多く、彼女らの赤裸々な恋愛遍歴を聞かされる鳴鳥は勉強になりもするが、ほぼ赤面するばかりであって。
そのテクニック、駆け引きを自分のものには出来そうになかった。
経験が豊富な二人とは違う鳴鳥。
それでも彼女には今現在想う者が居て、二人にはその者の事を度々相談していた。
今現在の鳴鳥は彼の真意はどうなのだろうと思い悩む一方で、彼女の視界に入るのはメリエルのたわわな胸元であった。
想い人であるジルベルトの女性遍歴。
元カノであったと予測されるソフィーリヤは大人の女性であって、落ち着いていて、包容力もあって、軍人としても優秀で。
さらに言えば美人でスタイルも良く、非の打ち所がない。
そして何よりも気に掛かるのはメリエルと同様の豊かな胸元であって、まじまじとメリエルのソレを見つめていた鳴鳥は思わずゴクリと息を呑んでしまった。
「んー? もしかして気になる?」
「や、やっぱり女の私でも目線が行っちゃうんだから、男の人なら尚更だよね」
「男が皆、大きいのが好みだとは限らないわ。現にナトリ、アナタは何人もの男を虜にしたでしょう?」
「そう……かな。自分では何でなのか分からないけど……。でもやっぱり……」
「んふふ。何なら触ってみる?」
「え……!? いいの?」
「減るもんじゃないし、いいよ~」
「そ、それではお言葉に甘えて……」
ズイと突き出されたメリエルのモノを恐る恐る触れる鳴鳥。
地球での学生時代にもそういった女子同士のスキンシップを見かけた事はあるが、自分がこんな体型で、尚且つ触りたいとは言い出しにくく、その時は遠巻きに見るだけであった。
こうしてあの時の女子達と同じ体験をして得た感想は、まず第一にふかふかである。
その触り心地はいつまでも触っていたくなるほどのもので、思わず顔を埋めたい衝動に駆られもする。
ひとしきり感触を楽しんだ鳴鳥は自分の胸元と見比べて我に返り、がっくりと肩を落とした。
「ん? どしたの?」
「ううん。やはり、無いよりはあった方が良いんだなぁ……って思い知らされただけだよ」
「そっかそっか。だったらあたしがなっちんのを大きくしてあげるよ~」
「え?! あ……っ、ちょ、ま……っ、ひゃぅ!」
ニマニマといやらしい笑みを浮かべるメリエルは鳴鳥の背後から抱き着くと容赦なく胸をまさぐる。
その手つきは何故か手馴れていて、思わず鳴鳥は恥ずかしい声を上げてしまい、その声に自分が一番驚いて、咄嗟に手で口を覆う。
自分はメリエルのモノを触らせて貰ったのだから耐えなくてはならないが、彼女の触り方はどうにも耐え難いもので。
我慢しきれず静止を呼びかけると「大きくならなくていいの?」と脅されてしまい、されるがままになり、涙目になりつつ耐えていた。
「メ、メリエル!? そこは……っ」
「ん~、どうした~? ここがエエのんかぁ~?」
「さ、先は……っ、関係ないでしょ!?」
女の子同士でイチャイチャとじゃれ合う様。
それは決して見苦しいものではないのだが、マイアは呆れたような様子で忠告を促す。
「揉んだからといって大きくなるというのは間違いよ。そもそも脂肪の塊なのだから、揉めば逆に燃焼されてしまうんじゃないかしら?」
「え……!?」
「確かにそうかもだけど、好きな人に揉まれて気持ち良くなったら大きくなるって説もあるよ?」
「ど、どっちなの!?」
「それじゃあ取り敢えず片方だけをあたしが揉んで、もう片方は例の彼に――――」
「そんなの無理だよ!」
「ですよね~」
流石にこの冗談は許せないと、鳴鳥はぷくっと頬を膨らませてそっぽを向く。
彼女の様子に行き過ぎだと、マイアに肘で小突かれたメリエルは反省して慌てて謝罪し、場は何とか収まった。
「……どうしても大きくしたいって言うのなら方法が無いわけではないんだけどね」
「え!? ホント!? メリエル……!」
「……えらい食いついて来るなぁ」
技術が発展したこの宇宙。
他の星々を自由に行き来できたり、ARKSという兵器もあり、地球より遥かに高度な科学力である。
それならばより確実なバストアップがあるのではと、雑誌の後ろの方に掲載されている怪しい器具やクリームとは違った確実な手があると、鳴鳥は希望を抱いてメリエルから方法を聞き出す。
「豊胸手術すれば……――――って、どしたのなっちん?」
「いや、それは流石に……」
「そうよね。天然物でない偽乳などに悦ぶ男の方がどうかしているわ」
「まぁそうだよねー」
ケラケラと笑うメリエルとマイア。
一方最後の頼みの綱も潰えてしまった鳴鳥はガクっと肩を落として項垂れる。
そこまで気に病むことは無いのにと、持つ者は持たざる者の悲しみが理解できないようだが、落ち込み切っている事だけは明白であって、さめざめと泣く鳴鳥を慰める為にメリエルは自身のソレのデメリットを教えた。
「まぁ大きいのは大きいので色々と大変なんだよ」
「……例えば、どこが……?」
「ほら、大きいと肩がこるし」
「そのしんどさを味わってもいいから、欲しいです……っ」
「えぇ!? そっかぁ……。それじゃ、アレだよ、あたしのサイズって普通の店じゃ無くって、あったとしても可愛いデザインが無いんだよね~。ほら、店って一番平均的なサイズのものを揃えるでしょ」
「通販やオーダーメイドを使えば良いんじゃないかしら」
「もぅ、マイマイ。あたしがそこまでリッチに見える? ……まぁ、気合を入れるとき用に何着かはお高いのがあるけどさ」
「……私のサイズも、あまり種類多くないよ」
「え……っ!?」
大きすぎるサイズの種類が少ないように、あまりにも小さすぎるサイズもあまりないようで。
改めて自分の貧相っぷりを目の当たりにさせられ、やはり小さなことに利点は無いのだと落ち込む鳴鳥。
どんよりと、海のそこまで沈んでしまう様な凹みっぷりにメリエルは懸命になりながらフォローをした。
「ほ、ほら、大きいと狭い所が通れなくなるし、攻撃を避けるときに当たっちゃうかもしれないでしょ?」
「それでも、無いよりはあった方が良いよ……」
「そんなことは無いよ! 世の中には小さい方が良いっていう人達もいるし、そこまで気にしなくても…」
「でも、ジルベルトさんはきっと――――」
結局行き着く先はそこで。
想い人の趣向であって、それに沿えなければ意味が無い。
悩んでいても膨らむわけでもなく、ウジウジしていると余計に抉れてしまいそうで。
深々と溜息を吐いた鳴鳥はどうにもならない悩みから目を背けようと、もうこの話は忘れようとこれまで励ましてくれた二人に礼を述べ、話題を変えようとした。
「待って、ナトリ」
「……どうしたの、マイア」
「その悩みの事、なのだけれど……」
「……?」
持つ者がソレを駆使してどういった事をするのか。
そういったプレイ内容をマイアから聞かされた鳴鳥は耳まで赤くして、そしてメリエルのソレを見て想像してしまい、口をパクパクと開閉させながら呆けてしまった。
「メ、メリエルも、その……、そういった事をするの?」
「んー……、まぁ気に入った相手で、やって欲しそうな顔をしていたり、やってくれって言われたら、ね」
「……ほ、本当に……!?」
「メリエル。アナタは意外と献身的なのね。あんなのは男だけが良くなるものじゃない」
「確かにそうだけど……。ほら、相手が気持ちよさそうにしているのって良いじゃん? マイアだって手とか口とかは使うんでしょ?」
「それもそうね。あと私は足、とか」
「マジで!? そっちの方が凄いじゃん……」
「……」
「まぁ、そんな使い方もあるけど、みんながみんなソレを求めているって訳でも……――――って、なっちん!?」
ポテンと倒れるように身を横たえた鳴鳥。
どうやら彼女には刺激が強すぎる話だったらしく、意識を手放すことで衝撃的な話を聞かなかった事にしようと、自己防衛本能が働いたようである。
「おーい、なっちん。大丈夫かー?」
「……駄目ね。まぁ、今日はこのまま寝かさせてあげましょう」
「ま、しょうがないか。それにしても、今度からは気を付けないとね」
「そうね。あまり刺激の強すぎる話題は避けた方が良いのかも」
調子に乗り過ぎた事を反省したマイアとメリエルは放心状態の鳴鳥にブランケットを掛けてあげて、それぞれもベッドに入り眠る用意をした。
「それにしても、このくらいで音を上げていて、年上の男を落とせるのかなぁ」
「初心な所が良いって事もあるくらいだし、ナトリはそのままで十分だと思うわ」
「まぁ相手がオッパイ星人のオッサンならそれもあるかもだね」
「逆にナトリが無知なのを良い事にアレコレ仕込まれないかが心配だわ」
「あー……、そうだね。ここはあたし達が正しい知識を教えてあげないとね」
「確かに。それが良いわ」
彼女達の知識も偏っているのだが、残念ながらここでそれを訂正する者は居ない。
幸いな事に知識を吹き込まれる側の鳴鳥が直ぐにキャパオーバーを起こしてしまうので、余計な知識は身に付かずに済みそうであった。
落とされる灯り。
厳しい訓練と眠さを堪えながら受ける座学もあってか、皆はぐっすりと眠ることが出来たのだが、眠る前に聞かされた話により、その晩の鳴鳥が見た夢はとんでもないものであった。
眠っている間に見る夢というものは過去の出来事であったり、意外な人が登場したり、非現実的な事が起きたりと不可思議であるが、己の奥底の願望を叶えるような事もある。
鳴鳥が見た夢。
それは自身の身体が出るとこは出ていて、引き締まる場所はキュッと引き締まっていて、まさに理想の身体となっていて、更には想い人まで出てきて、そして……。
「……んん……っ、んぁ……?」
実に良い所で途切れてしまった夢。
朝陽が差し込む室内でのっそりと上半身を起こした鳴鳥。
ぼんやりとした眼で室内を見渡し、ここが何処であるのかを理解し、そして夢と共に消えてしまった想い人の姿と自身の胸元に目覚めて早々落胆するのであった。




