才華の一族は優等生!
正直に言えば面倒で仕方がない。
他の誰もが栄誉だと言う王朝建国企画が、王維には面倒で仕方がない。
出世欲も、天の繁栄どころか、一族の繁栄にすら興味がない王維では仕方がないが、
実際のところ、王維の出世はほぼ確定済み。
今さら何か手柄を立てたところで変わるのは出世する時期か…、
もしくは、すでに称号と呼ばれる1等星への昇格ぐらいしかない。
そこそこの家柄、能力であれば3等星までが普通。
王維のような上級神―主に第三神位以上―の一族であれば準2等星。
しかも王維の実力なら2等星は確実と言われている。
…ならば、残るは1等星のみ。
ここ200年ほどでは1人しか現れていない。
まあ、結局本人に出世欲がなければ称号も意味がないのだが…。
指定された部屋に入ると青い生き物が座っていた。
生き物、と思ったのはその人物が男か女か判別出来なかったから。
鮮やかな青い髪に、硝子に水を注いだような瞳。
胸元まで伸ばした髪とさして変わらない色をした衣服…術師?
こちらと目が合うと、温和に微笑む顔があまりにも中性的すぎて判別出来ない。
「あなたも王朝建国企画のメンバーの方ですか?」
「ああ。」
…声、話し方まで中性的な場合は何で判別すればいいのだろう。
「申し遅れました識と申します。
まだ全員揃っていないので、詳しい自己紹介は後にしますね。」
にっこりと、優等生的な名乗り。
名前すら…自己判断では難しい相手だな。
「…ひとついいか。」
「はい?」
「お前男か、女か?」
聞いた途端青い奴は固まった…と思ったらおもむろに後ろを振り向いた。
「…すみません、刃物持ってませんか?」
「あ?…てめえ何する気だ…!」
青い奴しかいないと思っていたら、背後の壁に一人の男がもたれかかっていた。
いきなり怒鳴り声での返答で目立ちそうなのに…話しかけるまで一切気配がしなかった。
「いえ、混乱を招くくらいなら、バッサリいこうかと。」
笑顔の向こうに夜叉が見える。
が、その笑顔を向けられた男は平然と怒鳴り返す。
「てめえの女顔が髪ぐらいで治るか!間違われるのがいやなら先に性別くらい言え!」
同感だ、そして青い奴はどうやら男らしい。
たしかに、立ち上がった男の身長は後から現れた(?)男より長身だ。
ゆったりした術師特有の恰好と細すぎるから中性的なのだろう。
…しかしこの男何者だろう?