午前11時57分
ただのバカップルです。
何度でも言うよ、だいすきなんです。
「絶対弄ばれてポイされるに決まってる!」
暖かい空気と温かいごはんを満喫していたのに、友達の衝撃的な一言に一瞬で心が氷河期に逆戻り。飲み込んだうどんがちょっと出そうになって両手で口元を押さえる。
「あんたみたいなぽけっとしてる子なんかペロリよペロリ!そんで食い逃げされるに決まってるじゃない!」
ああ、恐ろしい!と友達が頭を抱える。坂田くんと付き合うことになったよと照れながら勇気を出して告白しただけなのに、何故こんなことに?ここはしっかりと自分の意気込みを伝えておかないと!温くなったミルクティーを飲み干して立ち上がる。
「大丈夫!わたしが坂田くんのことずーーっと好きでいるから!!」
なにが大丈夫!?と言う友達のツッコミの直後、ガシャーン!と食器が割れる音がした。後ろを振り向いてみると、お盆を持ったまま固まっている真っ赤な顔をした坂田くんと目が合った。坂田くんの足元には無惨な姿になった日替わり定食。プシュー、と頭のてっぺんから湯気が出てきそうなぐらい熱くなったわたしの手をギュッと握った坂田くんの手もあつくて汗ばんでいた。
「一生、大事にします」
「だから、春ちゃんを俺に下さい!!」と、友達の前で土下座した坂田くんが食堂のみんなの注目を集めたのは言うまでもありません。
「昼間っからプロポーズまがいなこと言ってる青臭いヤツ見てると、なんかこう無性にそいつの顔面にパイ投げしてやりたくならねえ?」
「後片付けが面倒だろ」
「つーか野上、お前どっからそのパイ持ってきたんだ」
「企業秘密」
そんなわたしたちの後ろで、野上くんたちがなにやらコソコソとしていたことに気付くのは、坂田くんの顔がパイまみれになってからのお話です。