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午前7時45分

甘過ぎ警報です。

きみといると、毎日がくすぐったいです。





「春ちゃん、頬っぺた真っ赤じゃん!」



冷蔵庫の冷気みたいなキンキンに冷えた風と格闘しながら歩く。おいしい匂いのするパン屋さんの前を素通りしてお腹の虫の声も聞かなかったふりをする。だけど、後ろから聞こえてきたあったかいコーンスープみたいな声にはちゃっかり反応しちゃうから、困ったものです。



「こんな薄着だけじゃ今年の冬は乗り切れねえから!ホラァー、手も冷たいし!女の子は身体冷やしちゃダメなんだからな!めっ!」



わたしを見るなり、自分の身にまとっていたマフラーを冷えきったわたしの首にぐるぐる巻き付けてどこかの心配性なお母さんみたいな台詞を並べる。その上コートまで脱ぎはじめてしまうから慌てて止めた。きみのおかげでもう十分、あったかくなりました。



「さ、寒いからさぁ…手繋ぎたくね?」



つーか、繋ぎたいデス。と、さっきまでマフラーに隠れていた彼の顔がみるみる赤くなっていく。つられてわたしも赤くなる。今ならマフラーも手袋もなにもなくても冬を乗り越えられそうな気さえした。




「朝から恋人繋ぎしてるカップルみるとなんかこう無性に、えんがちょーっ!て、してやりたくならねえ?」

「ならないならない」

「その腹黒い手つきやめろ」



わたし達の後ろを歩いていた坂田くんの友達のひとりである野上くんが、毒のあることばを甘い笑顔に乗せてさらりと言い放ちます。他のお友達に冷静にツッコミをいれられても、ケロリとした顔を崩さない野上くんは「おーい」とわたし達に向かって、話かけてくる。



「春ちゃん、寒そうっすねー。貼るホッカイロ、背中に貼ってやろうか?大量に」

「え!?それ…火傷しない…?」

「さあ?」

「春野で試してみりゃあ、分かるだろ。おら、背中出せ背中」

「ええーっ」

「お前らさあ、いい加減やめてくんない!?いちいち邪魔しようとすんのやめてくんない!?」

「俺らなりの愛だよ、愛」

「そんな愛いらねーっつの!」



野上くんたちに茶化されてどつかれて、それでも繋がれた手は緩まないから、思わずひとりで恥ずかしくなる。わたしの赤い顔に気付いたきみは、目を丸くして言うのです。



「まだ寒い?」



熱いくらいだよ、とゆっくりときみの大きな手を握りかえすさむくてあったかい朝の出来事。




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