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女流探偵 境出水の事件簿 ~第4話 負けないで~ (改訂版)

作者: 目賀見勝利

            短編推理小説

   《女流探偵 さかい 出水いずみの事件簿》

       第4話 負けないで



負けないで1;プロローグ

東京メトロ銀座一丁目駅近くの境出水探偵事務所  10月21日 午後5時 頃


境出水が応接用のソファに座って高校生の恋愛をテーマにしたTV番組をウトウトしながら見ている。


『東京都内の繁華街の夜のこと。

 赤いワンピースを着た多真子とジーンズ姿の時男の視線がぶつかった。

 そして、二人は互いに会釈をした。

 時男は都内にあるN高等学校のテニス部のキャプテンで、今年の夏のインターハイでテニスシングルスの優勝者であった。

 多真子はN高等学校の近隣にあるS女子高校のテニス部員である。

 都内での高等学校テニス大会で時々、お互いの姿を見かけていたふたりである。

 時男はテニスの試合中に多真子の視線を感じることがあったのを覚えていた。

 多真子はテニスで躍動している時男を眩しく感じながら、

 心の中で知らず知らずに時男を応援している自分に気づいていた。

 現在、時男は高等学校を中退してテニスの世界ツアー大会に参戦することを考えていた。

 そして、今日、二人は急速に接近していくことになる。』

 と、ナレーションの声がTVのスピーカーから聞こえていた。


 ZARDの歌曲『負けないで』の曲が事務所内の天井に埋め込まれたスピーカーから流れている。契約有線放送局からの提供音楽である。


♬・・・・・・・・・・♬


秋の夕暮れ時で、太陽は西のビル陰に沈もうとしていた。


「今日もお客は無さそうだし、そろそろ店仕舞いの時間ね。」と思い、出水がソファーから立ちあがった時、電話のベルが鳴った。


「はい、境出水探偵事務所でございます。」

「もしもし、出水か。お父さんだ。」

「なーんだ、お父さんなのか・・・。」

「『なーんだ。』とは、何だ! お前への仕事の話だ。」

「ちょっと、お父さん、ほんと?」とビックリしたように出水が言った。

「お前だけではちょっと不安だから、お前の知り合いの磯田とか云う探偵も一緒に連れて来い。確か、恵比寿か渋谷に探偵事務所があったな・・・。」

「そうよ、渋谷の道玄坂よ。でも、連れて来い、って何処へ?」と出水が訊いた。

「水道橋ドーム野球場だ。そこに、プロ野球Sリーグのビッグメン軍の事務所がある。そこに、午後6時ころまでに来い。」

「でも、磯田さんがつかまらなかったら、私ひとりでもいい?」

「なんとか捕まえて、連れて来い。いやがったら、首に縄でも着けて引っ張って来い。」

「まあ、乱暴な。磯田さんは空手3段よ。わたしがされちゃうわ。」

「何でもいいから、6時までに水道橋ドームに二人で来い。判ったな、時間がないのだ。至急だ。」と言って、出水の父親である境五郎は電話を切った。



負けないで2;依頼

JR水道橋駅近くのプロ野球チーム・東京ビッグメンの事務所の応接室 10月21日 午後6時 頃


ビッグメン軍社長・太刀川良平と境五郎、境出水、磯田明の4人がソファーに座って話し合っている。


境五郎は都内に大型、小型の貸しビルを10棟持っている貸しビル会社のオーナー社長である。同時に、ビルメンテナンス管理会社も経営している。東京ビッグメン軍のオーナー会社であるY新聞社の大手町本社事務所が入居しているビルのオーナーでもあり、その関係から太刀川良平とも懇意にしていた。境出水探偵事務所がある雑居ビルも境五郎が所有する貸しビルである。


「実は、高木龍一投手が行方不明です。」と太刀川良平が言った。

「えっ。テレビや新聞などの報道では、Pリーグ1位の東北ノンキーズとの日本シリーズに向けて秘密特訓のためにどこかの山に身を隠して練習していると云うことでしたね?」と磯田明が訊いた。

「表向きはそうですが、Sリーグのプレーオフで大阪パンサーズ軍を敗って1位になった翌日から行方が判っておりません。姿が見えなくなって、今日で5日目です。」と太刀川が説明した。

「警察には届けたのですか?」と出水が訊いた。

「ええ、正式な捜索依頼ではないですが、先ほど警視庁に行ってお願いしてきたところです。高木投手の行方不明が表面化すると、ひと騒動になります。3日後の10月24日からの日本シリーズを控えて、社会を騒がせる訳にはいきません。そこで、Y新聞社の重役を通じて警視庁の上層部に秘密捜査を依頼しました。しかし、警察の実務部門がどれだけ真剣になって捜査してくれるのか? また、表面化しないように捜査するには、かなり難しい面もあるでしょうから、警察の捜索だけでは高木投手の発見はかなり確率が低いと思っています。また、私の新聞記者時代の経験から考えると、警察は組織が大きいので担当者が動き出すまでにちょっと時間がかかります。ですから、別の側面からの捜索も必要ではないかと考えました。境社長の娘さんが優秀な私立探偵であることは以前から知っていましたので、捜索依頼をすることを思いつきました。ぜひとも、高木投手を見つけていただきたい。しかも、今から二日以内、すなわち48時間以内に。たぶん、警察の捜査はあなた方よりも半日から一日遅れるでしょう。しかし、最後には警察の力が必要になる可能性が大きいと考えています。警察が機嫌きげんを損ねるといけませんので、あなた方のことは警察には秘密にしておきます。よろしくお願いします。」と太刀川良平が頭を下げた。


「最後に高木投手を目撃された方はどなたですか?」と磯田が訊いた。

「同僚の斎藤投手です。JR恵比寿駅前の焼き肉店から出たところで別れたとの事です。10月16日の夜9時ころだったそうです。高木投手は独身で、恵比寿駅から歩いて5分くらいのところにあるマンションにひとりで住んでいます。17日の午後からのチーム練習に無断欠席したので水原監督がマンションや携帯に電話したのだが、本人は電話に出なかった。今も、携帯電話は電源が切られたままです。」と太刀川が言った。

「焼き肉店からまっすぐマンションに帰って行ったのでしょうか?」

「斎藤投手の話では、恵比寿駅の反対側にあるマンションの方向に歩いて行ったとのことです。しかし、斎藤は駅前でタクシーに乗ったので、最後までは確認していません。高木投手失踪の件は斎藤と水原監督が知っているだけです。水原監督の機転で、チームの選手やコーチには某所で隠密練習していることにしました。しかし、あと二日以内に高木投手が見つからないと事態は表面化してしまい、世間を騒がせることになります。ビッグメン番記者の中には、高木が何処で隠密練習しているのかを真剣に探し回っている人もいるようです。」



負けないで3;調査方針検討

銀座一丁目駅近くの境出水探偵事務所   10月21日 午後8時 頃


銀座『鶴天つるてん』で天ぷらを食べた後、探偵事務所に戻ってきた境出水と磯田明が今後の捜索方針について話合っている。


「時間がない。捜索方針は決め打ちで行こう。」と磯田が言った。

「どんな?」と出水が訊いた。

「決まっている、誘拐だ。」

「誘拐?身代金要求は来ていないわよ。」

「俗に云う営利誘拐ではないが、拉致監禁と考えよう。そして、金銭がらみと想定してみよう。」

「恨みによる誘拐じゃないと?」

「仮に、恨みによる誘拐としたら、高木投手はすでに殺されている可能性がある。それなら、必死で探す意味がない。また、すでに死体が発見されていてもおかしくない。」

「死体が見つかっていない現在、高木投手は生きていると考えられる。とすれば、高木が居ないことによって何らかの利益を得ることができる人間がいると云う事だ。」

「なるほど。犯人はさしずめ、野球賭博の胴元である暴力団ってところかしら?」

流石さすが、出水だ。その線で行こう。」

「でも、どこの暴力団か判らないわね・・・・。」

「拉致誘拐を計画した奴らは、高木投手を尾行していたはずだ。マンション前での拉致は人目につくし、監視カメラの存在も気になるだろう。」

「そうすると、焼き肉店とマンションの間で拉致された?」

「まあ、そんなところか?」

「斎藤投手と別れた後、マンション以外の場所に向かった可能性は?」と出水が言った。

「確かに、マンションと焼き肉店の間だと拉致の目撃者がいるかもしれないな。高木投手が大声を出せば、恵比寿の繁華街だからな・・・。斎藤投手と別れた後、恵比寿駅から山手線かメトロに乗って何処かへ行った可能性もあるな。JRやメトロの駅にある監視カメラ映像の調査は警察がするだろうから、我々は違った方向から調査を行うことにしよう。」

「顔見知りの人物が犯人で、車から高木投手に声をかけ、車に乗せた。としたら?」

「うん、その可能性もあるか?」

「高木投手の性格を調べてみる必要があるかもね。」と出水が言った。

「どうして?」と磯田が訊いた。

「行動パターンよ。日本シリーズの決戦に向けて、何か決意を固めておきたいと思う性格なら、どこかの神社にお参りにいくとか?昔から、そう云うパターンを持っていたかどうか?スポーツ選手って、よくジンクスを気にするわよね。」

「まあな、それはあるかもな。高木投手は高等学校卒業から昨年までの10年間は二軍にいた選手だ。それが、突然、開眼して今年の6月から一軍に参加し、負け知らずの20勝投手になった。何が彼をそうさせたのか、スポーツ界では話題になっている。空手仲間でもどうなっているのだと評判になっている。無敗での勝利の理由は精神面にあると考えられる。投球技術だけで突然の開眼はあり得ない、と云うのが空手仲間での一致した意見だ。スポーツ新聞では、高木投手で3勝は堅いから、日本シリーズの勝者は間違いなく東京ビッグメンだろうと云う予想だ。」と磯田が言った。

「それじゃあ、野球賭博は成立しないわね。暴力団が高木投手を誘拐する理由がそれね、たぶん。胴元は博打ばくちで金儲けができない。それとも、高木投手が出場しなければ、敗戦が予想される東北ノンキーズに賭けてガッポリお金を儲けられる・・・・と云う訳ね。」

「開眼の理由か・・・。決心を固めた場所が何処か・・・。ジンクス・・・。昨日のスポーツ新聞の特集記事では、確か、高木投手は埼玉県にあるT大三高の野球部出身だったな。甲子園出場はしていないが、ドラフト3位で東京ビッグメンに入団した好投手だったようだ。当時の埼玉県高校生ナンバーワン投手に選ばれていたようだ。今年がダメなら、ビッグメンから契約解除を言い渡され、お払い箱となっていた可能性があると云う記事が書かれていたな。」


「埼玉県のT大三高ね。明日あした、聞き込みに行ってくるわ。どんな性格だったのかしら?」

「なんとか、明後日の夕方までには、高木投手を発見したいな。拉致された場所の特定ができれば、目撃者も出てくるかもしれないからな。俺は渋谷界隈のその筋の人間から野球賭博の情報を集めてみるよ。」と磯田が言った。



負けないで4;出水の聞き込み調査

埼玉県東松山市にあるT大三高の職員室   10月22日 午前10時50分ころ


野球部監督で日本史の教師をしている土田教諭と境出水が休憩ソファーに座って話している。


「スポーツ週刊誌『番号1』の編集長からの依頼で、ビッグメン軍高木投手の高校時代の事を取材に参りました。よろしくお願いいたします。」と名刺を渡しながら、境出水が言った。

「私立探偵さんですか。珍しいですね、ふつうはルポライターの方がお見えになるのですが。三日前にもスポーツ新聞の記者がお見えになり、高木のことを取材して行かれました。それで、どういった事をお話すればよろしいでしょうか?」と土田教諭が訊いた。

「高木投手の性格を知りたいのですが?」

「性格ですか・・。」

「たとえば、几帳面だとか、ジンクスを重視する性格だとか・・・。」

「几帳面ではなかったですね。練習日誌などは書かないタイプでしたね。ジンクスはまあ、気にするタイプですね。試合で勝った翌日などは髭を剃らないで次の試合をする球場に来ていましたからね。」

「よく神社にお参りに行っていたとかは?」

「ありますね。東武東上線の東松山駅近くの箭弓やきゅう神社にお参りに行っていたようですよ。あそこはバットの形をした絵馬がありましてね、全国の野球少年が願い事を書いて奉納していますからね。甲子園出場祈願とか、埼玉県制覇とか、ホームランを打てますようにとか・・・ね。秋と夏の大会前には必ず野球部でお参りに行きましたな。私を筆頭に全員で参拝しました。これは、個人ではなくチームとしての祈願です。チームとしての決意と個人の決意を再確認するのが目的でした。神様に勝利を下さいとお願いするのではなく、あくまで自分たちの決心を固めるための参拝です。まあ、監督としては、野球部員が怪我をしない事と技術向上に精進する事を願って、神様のご加護をお祈りしていますがね。兵法者の宮本武蔵は言っています『神仏はたっとし、されど頼まず。』とね。」

「なるほど。ところで、高木選手の私生活などは如何でしたか?」

「プライベートの事はあまり知りません。ああ、そういえば、当時の女子マネージャーのひとりと交際しているとかの噂がありましたね。練習中もそのマネージャーの高木を見る視線は、他の選手を見るのと違っていたのを記憶していますよ。他校との試合開始前に、彼女がポツリと言うのですよ『今日は高木投手の調子はいいですよ、監督。』とかね。そうすると、相手の打者バッターから三振をジャンジャン取るんですよ、高木がね。試合前に彼女が『今日は調子が悪いです』と言った時はポカスカとヒットを打たれるんですよ。あれは、不思議だったな。よほど、高木の事を観察しているのだな、と感心しましたよ。どうして高木の調子が試合前から判るんだ、と聞いた事がありましたね。投球動作に入ってたまをリリースするまでの時間が3秒以内だと相手打者には打たれない。3秒を越えると打たれることが多い、と云うことでした。私は気が付かなかったことでした。しかし、その女の子も昨年の秋、他の男性と見合い結婚をしましたよ。私も披露宴に出席しました。高校を卒業した後は都内・原宿のブティックに勤めていたとの事でした。卒業してからも高木と付き合っていたのかどうかは知りませんが・・・。」

「その方の住所とかは、判りますか?」

「ちょっと待ってください。」と言って、土田教諭は自分の事務机の方に歩いて行った。


「ああ、ありました。現在、川越市に住んでいますね。」とソファーに戻ってきた土田教諭が手帳の住所録を見ながら言った。

「お名前は?」

秋山瑞枝あきやまみずえですね。旧姓は園田です。」



負けないで5;磯田の聞き込み調査

東京都渋谷区宇田川町のラーメン店   10月22日 午前11時20分ころ


磯田明が行きつけのラーメン屋の亭主と話している。


「いつもカウンターの端でラーメンを食っているチンピラがいるだろ、あいつ暴力団員かな?」と磯田が訊いた。

「ええ、この近くに事務所がある立花組の組員ですよ。」と亭主が言った。

「立花組といえば、広域指定暴力団『河菱会』の傘下だったかな。」

「ええ、そのようですね。」

「以前、渋谷界隈でたむろしている不良グループにあいつが絡まれているところを助けてやった事があるんだ。最近の暴力団員と云うのは弱くなったのかな?」

「ちがうでしょ。組から私闘けんかはするなと言われているんですよ。暴力団員があばれると、それを理由に警察が組事務所や関連場所、組長宅などの家宅捜索に乗り込んできますからね。それでからぬ証拠でも見つかれば、組としては大変ですからね。」と亭主が言った。

「奴らは何で金を稼いでいるのかな?」

「バー、キャバレー、クラブなどの用人棒じゃないですかね。」

「用人棒?」

「酒に酔った客が『高すぎる』とか言って支払を渋る事がよくあるみたいですよ。そのとき、客に金を払わせるのが用人棒の役目です。」

「暴力をふるう訳だ。」

「違いますよ、だんな。暴力をふるうのは、客の方です。用人棒は殴られ役ですよ。金を払えと凄みますが、手は出しません。用人棒が暴力を奮えば、お店が暴力バーになってしまい、警察の調査が入り、お店は風俗営業の許可を取り消されますからね。以前、テレビ芸人などがバーでの支払いを拒否して暴力を奮ったと云うことで新聞記事になった事件があったでしょ。殴られたのはいずれも店の用人棒だと云ううわさですよ。」

「暴力を奮われるのが用人棒の役目か?奴ら、体を張ったビジネスをしている訳か。世の中、変わったな・・・。」

「でも、殴られっぱなしじゃないですよ。殴った客には慰謝料や示談金を請求しますからね。これが、奴らの金儲けですよ。暴力現場の監視カメラ録画映像を見せ、それを証拠にして傷害事件で警察に届けると言えば、大概たいがいの客は金を払いますからね。」と亭主が言った。

「なるほど。ところで、その立花組の組員の居場所をしっているかい?」と磯田が訊いた。

「この時間なら、そろそろラーメンを食べにこの店に来ますよ。高原って云う名前ですよ。」


少し時間がって、高原誠がラーメン店に現れた。

「いつもの、にんにくラーメンを大盛で。」と高原がカウンター端の席に座りながら言った。

磯田が高原の隣の席に移動して、高原にささやいた。

「よおー。久しぶりだな。」

磯田は時々、ラーメン店で高原の姿を見ていたが、いままでは声を掛けることはなかった。

「だれだ?あんた。」と高原が言った。

「ホラ、2か月くらい前、コンビニの前で不良グループに絡まれていた時、おれが・・・。」

「ああ、あの時の探偵さんか・・・。あの時はどうも。」と高原が磯田のことを思い出して言った。

「昔のよしみで、ちょっと教えてほしいんだが。」

「何を?」

「野球賭博をしたいんだが、依頼窓口を知っていたら教えてほしい。」と磯田がヒソヒソと小声で訊いた。

「野球賭博?」と怪訝けげんな顔をして高原が言った。

「ここのところ、調査依頼客が来なくてな、稼ぎがないのだ。それで、事務所の家賃が払えそうもない。そこで、日本シリーズで金を稼ごうと考えているんだ。知っているか、窓口を。」

「あんた、警察さつの廻しものか・・・?」

「馬鹿いえ。警察に協力しても一銭の金にもならないだろうが。自分のためだよ。」

「そうか、信用しよう。夕方の6時から7時の間に渋谷図書館の近くへ行きな。それらしきお兄さんが二人いる。本日きょうの合い言葉は、『渋い谷』だ。相手が『本か?』と聞いたら、『エロ本』と答えろ。一口1万円で何口でもOKだ。」

「そいつら、あんたの仲間か?」

「いや、違う。河菱会直系の人間だ。」

「立花組は関係なしか?」

「いや、処場代しょばだいが河菱会から立花組に払われる。」

「なるほどな・・・。ところで、今年の日本シリーズの勝者は東京ビッグメンと云ううわさだが、どうなんだ?」と磯田が訊いた。

「確かに、高木とか云うピッチャーが3勝する可能性が大きいらしいな。高木が居る為に、河菱会でも博打をする客が減ったり、掛け金が減るのを心配していたな。胴元である河菱会に入るテラ銭や勝ち金が半減するだろうと云う噂も流れているぜ。あんたも東京ビッグメンにけるのか?それとも、高木が投げない日を選んで賭けるのか?」

「さすが、読みが鋭いな、高原さん。勝ち馬に乗るのが俺の主義だ。」と磯田が高原をおだてるように言った。

「東京ビッグメンじゃ、オッズ(賭け倍率)が小さいから掛け金を大きくしないと儲けは小さいだろうが。あんた、金無いんじゃないのか?俺が貸してやろうか?利子は高いぜ。」と高原が言った。

「ああ、ちょっと考えておく。ありがとよ。」と言って、磯田はラーメン店を出た。



負けないで6;調査会議

渋谷・道玄坂の磯田探偵事務所   10月22日 午後3時 頃


境出水と磯田明が今後の捜索方針について話し合っている。


「秋山瑞枝さんの話では1年半くらい前に高木投手とは別れたらしいわ。当時、お見合いの話があって、高木投手に自分と結婚する意志があるのかを確認したみたい。彼女も28才になっており、両親からも結婚を迫られていたらしいわ。それで、彼女が渋谷のクラブに高木投手をさそって、彼の意志を確認したそうよ。」

「返事はノーだったか?」

「ノーじゃなくて、『今はノー』だったみたい。彼もがけぷちに立たされていたみたい。」

「崖っ淵・・?」

「ビッグメンチームの2軍契約はその時から1年後までだと会社から通告されていたみたい。だから、彼から『結婚生活などとても考えることなどできない。』って言われたみたい。それで、彼女もお見合いする決心を固め、お見合いの相手が良い人だったので、半年後、すなわち、その年の秋に結婚したそうよ。」

「なるほど。そうすると、高木投手にとっては、今年の春くらいまでの2軍契約だったわけか。それで、必死になって練習をした訳だな。そして、今年の春頃に投球術を開眼し、6月から一軍登録になった、と云う訳だな。」

「彼女も彼の返事を予測していたみたいで、彼との思い出のあるクラブで、最後の夜、彼と一緒に踊りたかった、と秋山さんはシンミリと言っていたわ。」

「それが、渋谷のクラブか。名前は?」

「クラブ・カリビアン。場所は宇田川町にあるとか言ってたわね。」

「宇田川町?」

「それが何か?」

「俺の調査でも、宇田川町界隈のクラブが登場する。暴力団員がクラブの用人棒で小使い稼ぎをしているようだ。まあ、誘拐に関係があるかは不明だがな。高木投手がそのクラブ・カリビアンへ、誘拐された夜に向かったかどうかだな。」

「クラブに監視カメラでもあればいいのだけど・・・。」

「たぶん、在るぜ。用人棒の金稼ぎ用の監視カメラがな。」

「監視カメラの録画映像、見せてもらえるかな。」

「考えがある。知り合いの警察官に頼んでみる。」と磯田が言った。



負けないで7;磯田と出水の調査

渋谷・宇田川町のクラブ・カリビアン   10月22日 午後5時 頃


「申し訳ないが、10月16日夜の監視カメラの録画映像を見せてくれないかな?」と滝山警察官がクラブのオーナーに言った。


滝山警察官は渋谷界隈をパトロールするのが役目の渋谷署のパトロール警官である。

磯田探偵事務所をはじめ、宝石店、銀行、バー、クラブなどの危険な事件が発生しそうな場所に顔を出し、渋谷界隈の平穏無事を維持するのが役目であった。そのため、渋谷界隈の事業者間ではちょっとした有名人でもある。『警察官立ち寄り所』の標識が張られている店にちょくちょく顔を出すのが常であり、クラブ・カリビアンにも顔が利いた。


クラブのオーナーが従業員詰所に案内し、録画パソコンを操作して10月16日の録画映像を再生した。

「どうぞ、ごゆっくりご覧ください。私は開店準備のフロアー点険のため、席をはずしますが、パソコン上の操作ボタンをクリックすれば、巻き戻し、再生、早送りができますので、ご自分で操作してください。では。」と言って、オーナーは部屋から出て行った。


そして、滝山警察官に同行していた磯田がパソコンを操作し始めた。滝山と山内警察官、そして出水は磯田の背後からパソコン画面を覗き込んでいた。

「いた。高木投手だ。時刻は21時31分だな。」と磯田が言った。

「帰りの映像は?」と出水が言った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これだな。時刻は22時14分だな。45分くらい居たことになるな。」

「ひとりで来て、一人で帰っていますね。」と滝山が言った。

「いえ、ちがうわ。高木投手のあとでクラブに入って来た二人ずれが、帰りも高木投手が出て行った後に帰っているわね。」と出水が言った。

「この二人ずれだな。暴力団員かな?」と磯田が言いながら、録画映像を静止させた。


その後、オーナーや従業員にこの二人ずれの男を見せたが、常連客ではないし、今まで見たことのない顔であるとのことであった。



負けないで8;警察の調査

渋谷西警察署   10月22日 午後6時 過ぎ


「滝山君、ちょっと署長室に来てください。」

滝山警察官が非番になり帰宅しようと警察署の玄関を出かけた時、署長に呼び止められ、滝山は署長室に入って行った。


「10月16日の夜間パトロールの当番は滝山君と山内君だったね。」と署長が言った。

「そうです。山内は先ほど帰宅しました。」と滝山が返事した。

「警視庁の刑事さんがパトロールの話を聴きたいと云うことで来署されています。」


「警視庁の特捜班の小沢といいます。」

「同じく、坂下です。」

「滝山巡査です。」

「早速ですが、10月16日の夜9時15分以降に東京ビッグメンの高木投手を見たと云うような騒ぎはありませんでしたか?路上とか、どこかのビル内とかで・・・。JR渋谷駅のハチ公側改札口を午後9時15分ころに出た映像が監視カメラで録画されていました。この渋谷界隈を歩いているはずですから、野球ファンなら気が付いた可能性があるのですがね。」と小沢刑事が訊いた。

「ええ。騒ぎではありませんが、宇田川町にあるクラブ・カリビアンに遊びに来ていました。先ほど、私立探偵の磯田明氏と確認してきました。」

「私立探偵と確認?」

「ええ。球団から素行調査の依頼を受けて、高木投手の行動を調べているとか言っていました。高木投手がクラブ・カリビアンに立ち寄っている可能性があるので調べたいからクラブの監視カメラの録画映像を見せてもらえるかどうかオーナーに聞いてほしい、と磯田探偵から頼まれました。磯田探偵事務所はパトロール物件の一つに入っていますから、探偵とは顔見知りです。私たちもクラブの客がどのような行動をしているのかを知っておくのもパトロールの勉強になると思い、クラブのオーナーに頼んで10月16日の録画映像を見せてもらいました。そこに、高木投手の出入りの映像が写っていました。午後9時31分に一人で来て、午後10時14分に一人で帰って行きました。クラブ内での映像はありませんでした。」

「一人でね・・・。」と坂下刑事が言った。

「ただ、二人の男が高木投手を尾行しているのではないかと思われる映像も映っていました。」

「二人の男が尾行していた?」

「ええ。はじめてクラブに来た男たちだと店員は言っていました。」

「その後の二人の男の行動はわかりますか?」

「いえ。その後は追跡調査していませんので、判りません。すいません。」

「いや、結構です。ところで、その磯田探偵事務所は何処にありますか?」

「道玄坂の雑居ビルの4階ですが、ご案内しましょうか?」

「いや、地図で教えてくれれば結構です。」と小沢刑事が言った。



負けないで9;刑事との会談

渋谷・道玄坂の磯田探偵事務所   10月22日 午後8時  頃


渋谷図書館近辺で野球賭博の受付窓口をしていた二人の暴力団員を尾行し、渋谷駅前のビジネスホテルに宿泊しているのを確認した磯田明が探偵事務所に戻ってきた。二人はクラブ・カリビアンの録画映像に写っていた不審な男たちではなかったので、フロントで滞在期間を確認し、他に暴力団風の人物が宿泊していないかだけを確認して磯田は事務所に戻ってきた。


「お帰りなさい。お客さんよ。」と事務所の留守番をしていた境出水が言った。

「警視庁の小沢です。」

「同じく、坂下です。」

「磯田です。何か?」と言いながら、高木投手の捜査担当者だなと思った。

三人はソファーに座って話し始めた。出水は磯田の事務机に座っている。


「高木投手の居所は判りましたか?」

「いえ、まだ手掛かりはありません。」

「10月16日にクラブ・カリビアンに現れたらしいですね。」と小沢刑事が言った。

「でも、それ以降の足取りが判りません。」

「なるほど。」

「刑事さんは何か情報をお持ちですか?」と出水が訊いた。

「今の君たち以上の情報は持っていない。」

「カリビアンに居た二人の不審人物については?」

「現在、監視カメラ調査班が追跡調査している。渋谷、恵比寿、原宿界隈に設置してある街頭監視カメラを始め、コンビニ前、銀行前の監視カメラなどの録画映像を詳細にチェックしている。明日の朝には何か判るかも知れないな。」

「流石、警察の組織力はすごいですね。」と磯田が言った。

「じゃあ、これから街頭捜査に行くから、これで。何かあったら、渡した名刺の電話番号に連絡してください。」と出水に向かって言いながら、二人の刑事が事務所を出て行った。


「出水、はら減ってないか?」と磯田が言った。

「夕食に行きますか。」と出水が返事した。

「よし、ステーキでエネルギー補給して、もうひと頑張りするか・・・。」

「賛成。」



負けないで10;出会い

渋谷・道玄坂のステーキハウス「カウボーイ」   10月22日 午後9時  頃


横のテーブルで食事している3人組に見覚えがあるなと思いながら磯田はステーキを食べていた。

そして、磯田と出水が支払を済ます2分くらい前に3人組の男たちは食事を終えて店を出て行った。


「そこのコンビニでウーロン茶を買って来るから、出水は先に事務所へ戻っていてくれ。」

「私もジュースでも買うから、一緒に行きましょう。」

「そうか。」



負けないで11;尾行

渋谷・道玄坂のコンビニ「セブンツーセブン」前   10月22日 午後9時過ぎ


「奴ら、おかしいな。」と磯田が言った。

「何が?」と出水が訊いた。

「あれだけのステーキを食べたばかりなのに、弁当とおにぎりを二人分くらい買っていた。」

「誰か、仲間へのお土産か、夜食じゃないの?」

「仲間ね。思い出した、あいつ等。立花組の高原に絡んでいた不良グループの奴らだ。あの時は4人組だったがな・・・。ちょっと気になるな・・・。」

「出水、ウーロン茶とジュースを持って先に事務所に戻っていてくれ。何かあったら携帯電話で連絡する。」と言って、磯田は3人組を尾行して行った。



負けないで12;救出

渋谷区松濤美術館近くの一戸建ての家   10月23日 午前5時30分ころ


夜明けの太陽が東の空に昇ろうとしていた。


高木投手は両足と両手に手錠を掛けられ、目隠しをされ、特種な猿轡さるぐつわをされて横たわっていた。

そして、様々な思いが高木投手の頭の中を巡っていた。

「周りから複数の人間のいびきが聞こえるな。目が見えないから何時ころなのか判らないな。しかし、拉致されてから、食事を10回くらいしているから5日間くらい監禁されているのだろうかな。いつまでこの状態が続くのかな?日本シリーズはそろそろ始まるころだろうか?俺は殺されるのかな?殺すつもりなら、もっと以前に殺されていただろう。いずれ助けられるか、解放されるのかな?希望を持とう。身代金要求はしているのだろうか?助けられれば、すぐにでも日本シリーズに出場できるように、手足の筋肉と腹筋は動かしてあるが、体力は弱っているな・・・。しかし、今年は本当に自分でもビックリするくらいのシーズンだったな。やっと一軍に上がれた時は本当に嬉しかった。土田先生の教えを守り、怪我をしないように、そしてじっくりと技術向上に努力してきたお蔭だな。それと、箭弓やきゅう稲荷神社の奉納バット絵馬とお守りも。無事これ名馬なりか。宮本武蔵の五輪書のお蔭もあるかな・・・。『こころくうなり』か。冬季オリンピックの女子フィギアスケートで金メダルを取った、あの女の子。名前は何だったっけ。たぶんコーチから指導されていたのだろうが、『今までの事を忘れ、心をからにしてすべりました。』とか言っていたな。同じ練習を何百回も繰り返し、体にやることを覚え込ませてある、と云うことだろう。あの言葉で土田先生の教えを思い出したのがよかったな。『勝負とは天理に於ける拍子(リズム、はずみ)の奪い合い。勝つとは天の理にかなうこと。心は現場で鍛えよ。』だったな。今までの練習で、考えたり、行ってきた事をすべて忘れ、身体からだに覚え込ませた技術のままに無心でボールを投げる。それが、つまり、心は空なり。そうすると、戦いの場とおのれ身体からだが溶け合い、相手打者の考えや動きがなんとなく読めてきたな。そして、園田の励ましがなかったら、とっくの昔に俺はつぶれていただろう。クラブ・カリビアンで俺と踊っていた時、あいつ、泣いていたな・・・・。あの涙は忘れられない・・・。あの時の俺の決意を忘れてはいけない・・・。みんなに支えられてきて、今の俺がある。日本シリーズでみんなの期待に答えることができるだろうか?・・・・・。いま、ここであきらめる訳にはいかない。なんとかここから脱出する方法はないのだろうか・・・。負けないぞ、俺は・・・。」


「よし、踏み込む!」

リーダーの合図と共に、警察の機動隊員が表玄関、裏の勝手口、2階の物干しベランダ、庭側の窓などからドアーや窓を突き破って一斉に屋内に踏み込んだ。

その様子を境出水と磯田明は、徹夜明けの眠たい目をショボつかせながら、小沢刑事と並んで見ていた。


高木投手は無事保護され、見張り当番の一人と寝ていた3人の不良グループ全員は監禁の現行犯で逮捕された。

その後の警察の調べに対し、4人組の供述は次のような内容であった。

「暴力団風の二人が夜中に松濤美術館近くにある不良グループが根城ねじろにしている一戸建ての家に押し入ってきて、高木投手を10月30日まで監禁して見張れば100万円くれると言った。その時、消音装置付きのピストルを鼻先に突き付けられ、断われば殺すと脅された。当然、不良たちは殺されるよりも100万円を選択した。二人の暴力団風の男はそれ以後、姿を表わしていないらしい。前金の50万円はもらったが、残金は10月30日に貰う約束になっているとの事である。一戸建ての家は不良グループのひとりの実家で、父親が海外赴任のため両親は海外に長期滞在しており、一人っ子のその男が留守番をしていた。」


その後、暴力団風の二人の男は目撃されないまま、日本シリーズは東京ビッグメンの4勝3敗と云う結果で終了した。高木投手が先発して勝ち投手となった3勝が優勝に大きく効いていた。


二人の男は河菱会の組員だったのか、それとも、野球賭博でひと儲けを計画していた、他の暴力団の組員だったのか?あるいは、もっと他の狙いがあった人間の犯行であったのか?現在も、警察は犯人の追及捜査を続けている。



負けないで13;優勝パレード

銀座中央通り   11月中旬の日曜日の午前11時ころ


秋山瑞枝は人垣の後ろから東京ビッグメンの優勝パレードを見ながら、クラブ・カリビアンで高木投手と踊った夜のことを思い出していた。

「あの時は、彼と踊りながら、切なくて涙が自然と溢れてきたわ。私の青春の最後のお祭だったわ、あの夜が・・・。今から、彼のお祭が始まるのね・・・。おめでとう、高木君。」


紙吹雪の舞う中を、野球選手たちが乗ったパレードのバスが銀座方向から日本橋方向にゆっくりと移動し、銀座一丁目付近に近づいて来た。

観衆に手を振る日本シリーズMVPに輝いた高木投手の姿がその二階建てオープンバスの上に見える。

そして、高木投手を見つめる秋山瑞枝の前をバスが通り過ぎて行った。

瑞枝はおっととの待ち合わせ場所である銀座ソニービルの方向へと歩き始めた。


歩き始めた女性の後ろ姿が目に入った一人の選手が大声で叫んだ。

「園田あぁ・・・。」

女性は立ち止まり、声のした方向に振り返った。

そして、手を振っている高木選手と目が合った。


「園田、幸せそうな目をしているな。

 確か、昨年に結婚したという噂だったな。

 きっと、良い亭主に巡り合ったのだろう。

 しかし、あの時、俺が彼女の後を追っていたら・・・。

 あの時、おれの心が今のように強かったなら・・・。」

と、高木は秋山瑞枝を見つめながら、苦い思い出が甦ってきた。



負けないで14;エピローグ

銀座一丁目駅近くの境出水探偵事務所   11月中旬の日曜日


境出水は東京ビッグメンの優勝パレードを実況中継しているY新聞系列のテレビ放送局にチャンネルを合わせ、画面を見ていた。

「高木投手も嬉しそうね。よかったわ、無事に救出できて・・・。秋山瑞枝さんもパレードを見ているかしらね。」


しばらく放送を見た後、出水はテレビのスイッチを切って、契約有線放送の電源を入れた。

そして、天井スピーカーから西城秀樹の歌う『Ifイフ』が流れて来た。


♪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・♪

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※著者注記;IF (イフ)を聴いた事のない方へ:

インターネット検索で『YouTube-IF (イフ)西城秀樹』を見つけてください。

一曲だけ投稿されていました。

曲を聴く時は、パソコンのハードディスク破損防止のため、ヘッドホンで聴くことをお勧めいたします。



第4話  負けないで  改訂版   完

目賀見 勝利

2010年 8月 20日 午前10時12分 脱稿

2016年 8月 12日 午後05時01分 改訂版 脱稿


参考文献;奈良本辰也 著「宮本武蔵 五輪書入門」徳間書店 トクマブックス 昭和47年 刊



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