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愚者:40歳からでも人生は変えられる  作者: 白明


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14.The Temperance(節制)

キンドル本は、書いていて楽しい。

自分の中にある感情や気持ちをまとめていき、そして文字として綴っていく。

仕事とは違う、ある種の高揚感(こうようかん)をまとい、次々に新しいキンドル本を書いては、出版していく。


自分でもやり過ぎでは? と思うほどのスピードで発刊をしていく。

初出版から三カ月で四冊をリリースした。

どれも少しずつ読まれてはいる。


「もう少し、販促に力を入れなければ…」

X運用も順調でようやく八百人のフォロワーさんがついた。

X上には、キンドル作家さんが多く存在し、各々の得意分野とする発信を行っている。

キンドル作家同士で交流を持ち、そして、そこからまたつながっていく。

これまでずっとSNSをしたことが無かったため、最初は面食らったが、結構面白いものだ。


しかし私生活圏内の人間には、絶対にアカウントを知られてはいけない。

特に妻と子ども達には。


***


数日前に詩が、スマホをもって食事をしていたことを注意したばっかりだ。

「だって、学校にはスマホを持っていけないし、そうするとX見る時間とかないじゃん。しかもスマホは二十二時には提出しないといけないし、寝る時間も遅くなるからさ~。それに遅い時間になると、おっさんみたいなアカウントに絡まれて嫌なんだよね~」


ぎくりとした。

詩は、高校一年生。部活や塾で忙しいのもわかるが睡眠時間は何よりも大事。

そのためには、スマホの使用時間を制限する必要がある。

私の家では、二十二時を過ぎたら、スマホを強制的に提出させることで使用を制限する。

多感な年頃であるため、友人やインフルエンサーの情報を得たい気持ちもわからんではない。が、今ではない。

親として当然な縛りを設けているだけだ。

しかし、ちょっと胸が痛い。


いや、違う。そこではない。

詩が、Xをやっているということが問題だ。

私のアカウントを知られてしまったら、どうする?

私は飄々と「あ、そう。作家としてのアカウントだから」と受け流すのか?


作家であること自体、妻にも、子ども達にも言ってはいない。

むしろ私が書いている本を妻や子ども達に見られるなど、トイレ姿を見られるよりも恥ずかしい。

家でも私は子ども達に「意識高い」生活や習慣を指導しているが、それを本として出していると知ったらなんと言うだろう。

年頃の詩に至っては、先ほどX上の「おっさん」にかなり強い嫌悪を示していた。

父親の威厳を保つため、何としても知られてはいけない。

その夜、Xアカウントのプライバシー設定をより強固にした。


***


「ただいま~。ママー、ようやくゲットできたよ~」

塾から帰ってくるなり、詩は、妻に何かを渡していた。

「うお~! マジで~! やったじゃ~ん。これ、どこも売切れになってるんでしょ~? はい。お駄賃ね。やっと最新作が読める~!これをどれだけ待ったことか~!!」


どうやらマンガ本らしい。それもコテコテの少女漫画。

いくつになっても女性というのは、少女であるのだと鼻で笑う。


「あ、何、その笑い方!バカにしているでしょう! もう、本当にデリカシーないんだから! あなたもT様を見習ったらどうなの? もう少し稼いだり、生産性を上げたり……。はあ、うちの男たちには、言ったってしょうがないか……」


カチンときた。

そんな言い方はないだろう。

私だって、新しい習慣を取入れて、お金だって貯まっている。

仕事も一生懸命し、新しい車だって買った。そして、家事もきちんとこなしている。

いちマンガ家と比較して欲しくない。

そんな内容をちょっとだけボヤいてみた。


「はぁ~! T様は、あんたとは比較にもならんわ! T様はね、今流行りの電子書籍作家で、本業は別にしているのよ。あまりにも本が売れて、それをデザイナーさんにマンガにしてもらっているの! 今やどこの書店も在庫切れになっている、超有名人なんだからね! 私もXでフォローしているけど、本当に凄いんだから!」


えっと。

ちょっと待て。情報が多すぎる。


妻の手元からマンガを借り、奥付(おくづけ)を見る。

初版発行から十日足らずで第四版の重版(じゅうはん)がかかっているだと…。

異常だ。


そして、電子書籍作家?

本業は別?

マンガ化だと……?

眩暈を感じる。


私も電子書籍作家であるとは、決して言えない。

それこそ鼻で笑われる。

有名電子書籍作家の脅威を味わいつつ、そして、自分がいかに弱小であるかを改めて思い知らされる。


その夜。

T先生をフォローしました。

妻に、子ども達に見つからないようにキンドル作家活動をしなければと、強く心に誓った。


(つづく)

――――――――――――――――――――――――――

お読みいただき、ありがとうございます。

よかったら、つづきも読んでいただけますと嬉しいです。


また、あなたと会えることを楽しみにしています。


白明

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