表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者:40歳からでも人生は変えられる  作者: 白明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

10.The Wheel of Fortune(運命の輪)

って、格好イイことを言っている場合ではなくなってきた。

何かって?

物理的な問題である。


物理的って なにって?

本の量である。


私の性格的な問題でもあるのだが、何かをはじめると、とことんのめり込む。

周りの目も、そして、毎日の生活さえも巻き込んでしまう。

これで、何度、夫婦喧嘩に発展したことか……。


話を戻そう。

読書習慣が本格的にはじまると週に十冊の中古本の購入が、十二冊になり、十五冊になり…。

もちろん、購入した本は、我が家の本棚に収められていく。


妻も本やマンガが好きなため、我が家のリビングには、天井まで届く本棚がある。

そして、廊下には、チェスト本棚が三台設置されている。

これを埋めてしまうのは、瞬間であったことは容易に想像できるであろう。

私が買ってきた中古本が家庭内のいたるところの散乱し、夫婦の寝室にも溢れる状況がたった数カ月できあがった。


「いい加減にして!いつもこんなだから、こっちが困るのよ! はじめたら止まらない性格なのは、わかっているけど! は~。あなたは、いつもどうしてこうなの! まったく、子どもじゃないんだから! 今後は、一切、紙の本の購入は禁止!」


やってしまった……。

私は、妻の言葉には逆らえない……。

だって、私は妻に拾ってもらい、そして結婚したのだから……。

妻は、私より七歳年上で、養ってもらっていた時期もある。


完全降伏をした私は、それからの日々を悲しみとともに過ごした。

過去に購入した本の三度目、四度目の再読。

「ああ、新しい刺激を……。もっとたくさんの本が読みたい……」

再読をすることで新しい発見があり、曖昧だった情報がより定着されていく。


再読自体は、決して悪いことではない。

しかし、読書スピードは、一回目、二回目のそれより圧倒的に早くなる。

通勤時間は往復三時間。

少しでも本を読んでいたいと思う気持ちから、鞄の中には五冊の再読本が入っていることもあった。


世の中には、情報が溢れており、発信媒体も多岐に亘る。

テレビ、ネット、書籍、新聞、中吊り広告、看板などなど。

私達の生活において、完全に情報から切り離された生活を送るのは、既に不可能だといわれている。

特に情報収集・拡散スピードにおいては、ネットの利用が圧倒的だ。

通勤電車や喫茶店、どこにいても多くの人々がスマホに目を落とし、ネットで何かしらの情報を得て、そして発信をする。

しかし、私は、ネットではなく、本が読みたいのだ。


街を歩けば、ビルの上には新刊発表の巨大な看板。

電車の中吊り広告には、有名作家たちの新刊特集。

新聞の下部広告には、同じく新刊情報。

そして、テレビを見れば、「今、話題の新刊ランキング」。


気付かないだけで、本に関する情報はいたるところに散在する。

気にしはじめると、余計に目に付くようになる。

人間のメタ認知能力とは、凄まじい。

紙の本を買えないことがこれほど苦しいこととは。


あまりにも苦しすぎて、仕事で使用する専門書を持ち帰り、電車の中で読むことすらあった。

ここまでくると中毒者だ。

私自身ここまで読書に夢中になるとは思いもしなかった。

昔、母から「もっと本を読みなさい!」と激しく(しか)られたこともあったと思い出し、これまた自嘲する。

人生って何が起こるかわからない。


***


そんな、私に運命の女神は微笑んだ。


ある日、仕事から帰ってきた妻は、手に小さな包みを抱えていた。

仕事帰りに買い物のお願いをしても、忘れてくるのが当たり前となっている妻が買い物をしてきた。

悪い予感しかしない。

また、高額な何かを衝動買いし、自慢をしようと言うのだろうか……。


「あんな言い方して悪かったから、これ、買っといた。でも、やり過ぎ禁止。やるべきことは、きちんとやって。それと、家事はマストだからね」

相変わらず妻の言い方は、きつい。

ちゃんと考えようね。

大人なんだし。


そっと差し出されたそれは、水色と白を基調(きちょう)とした小さな箱。

子ども用クラフトおもちゃの包装によく似た、厚くも薄くも無いシンプルなデザイン。

表には英語の文字列がスタイリッシュに踊る。


私は、妻への文句の言葉を飲み込み、それを恭しく受け取った。

「ありがとう」

家事は完璧にこなします。

食事作りも、お風呂掃除も、子ども達の翌日の持ち物チェックもします。


手に入れました。

キンドル・ペーパーホワイト。

私の人生を変えた最強の相方を。


(つづく)

――――――――――――――――――――――――――

お読みいただき、ありがとうございます。

よかったら、つづきも読んでいただけますと嬉しいです。


また、あなたと会えることを楽しみにしています。


白明

――――――――――――――――――――――――――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ