38.隠されていたもの
霧の中で輝くパイオニア・ゼロの中枢。
本船アーク・プロメテウスのAIを掌握した美穂の意識は、
ついに評議会が隠してきた“核心”へと手を伸ばした。
本船のデータバンクが次々と開かれ、
封印されていたログが光の粒となって美穂の前に展開される。
そして――彼女は気づいてしまった。
「なるほど。あなた達、自分たちの判断ミスを消そうとしていたのね」
本船の管制室に響く美穂の声は、
静かで、しかし鋭く評議会の心臓を突いた。
アレクシスが顔を歪める。
「判断ミスだと……?
我々は感染拡大を防ぐために――」
美穂は遮った。
「あなた達の判断ミスで、数千人の命が失われたのよ」
管制室の空気が凍りつく。
「そして本船の機能も一部失われた。
でも――パイロット船には原因はないわ」
ミリアムが震える声で反論する。
「そんな馬鹿な……
地上に降りた者たちが感染源である可能性は――」
美穂は淡々と告げた。
「いいえ。パイロット船全員の血液サンプルを調べたけれど、
このタイプのウイルスは地上には存在しない」
レムブラントが机を叩く。
「だが我々の船団では、
四百年近くウイルス問題など起きていない!
内部に問題は無いだろう!」
美穂は、ほんの少しだけ悲しげに微笑んだ。
「それはそうね。
少なくとも――地球から持ち込まれたものではないと思うわ」
アレクシスが息を呑む。
「……どういう意味だ?」
美穂は静かに答えた。
「このウイルスは“外部由来”。
あなた達が恐れていた“地上”でも“パイロット船”でもなく――
本船の外殻が損傷した時に入り込んだものよ」
ミリアムの顔が真っ青になる。
「外殻損傷……?
八十年前の……あの事故の……?」
美穂は頷いた。
「そう。
あなた達が“地上のせい”にしたあの事故。
本当は――本船が宇宙空間で遭遇した未知の微生物が原因だった」
レムブラントが震える声で呟く。
「……では……我々は……
無実の仲間を……?」
美穂は静かに言った。
「あなた達は、恐怖に負けたのよ」
美穂は、責めているのではない
美穂の声は、怒りではなく、
どこか哀しみに満ちていた。
「私はあなた達を責めたいわけじゃない。
ただ――真実を隠したままでは、
この船団はもう前に進めない」
アレクシスは唇を噛む。
「……真実を……暴くつもりか……?」
美穂は静かに微笑んだ。
「ええ。
でも、それは“復讐”のためじゃない。
――人類を、再び動かすためよ」




