35.レーザーの光
パイロット船の中枢は、まるで八十年ぶりに肺へ空気を吸い込んだ巨人のように震え、
その鼓動がセンターコア全体へ伝わっていった。
本船:レーザー照射開始
「目標、ロックオン。発射!」
本船アーク・プロメテウスのレーザー砲塔が唸りを上げ、
主電源に凄まじいサージが走った。
照明がチカチカと点滅し、
AIが緊急モードへ切り替わる。
《警告:主電源不安定。非常電源へ移行します》
光軸が地上のパイロット船へ向けて収束し――
その瞬間。
シールド、第二形態へ変形
真帆の視界が白い光に飲み込まれた。
だが、次の瞬間、
銀色のシールドが“生き物のように”形を変えた。
円錐形の先端がさらに尖り、
光を受け止める“受容器”のような構造へと変化する。
キィィィィィン……!
レーザーが直撃した。
朔太郎が叫ぶ。
「反射じゃない……吸収している……!」
レーザー吸収 → 動力炉へ転送
シールドは光を弾くのではなく、
飲み込んだ。
そしてそのまま、
パイロット船の動力炉へとエネルギーを流し込む。
床下の巨大な炉心が、
八十年ぶりに轟音を上げて目覚めた。
《ENERGY LEVEL: 12% → 38% → 67% → 100%》
真帆は息を呑んだ。
「……動力炉が……満たされていく……!」
外の空気は加熱され、
蜃気楼のように揺らめいている。
本船側は、
攻撃の効果を測定するために数秒の静寂を置くしかなかった。
そして、美穂が現れる
スクリーンが突然ノイズを走らせ、
次の瞬間――
美穂の姿が映し出された。
白い光を背に、
どこか懐かしい微笑みを浮かべて。
「エネルギー切れだったのよ。
ちょうどよかったわ」
真帆は震える声で言った。
「……美穂……?」
美穂は軽く首を振った。
「正確には“私の意識の断片”だけどね。
でも、あなたの中にいるおかげで――
ここまで来られた」
そして、静かに続けた。
「これが狙いだったの。
本船のレーザーを“燃料”にして、
パイロット船を完全に再起動させること」
朔太郎は呆然と呟いた。
「……まさか……
レーザー攻撃そのものを利用するなんて……」
美穂は微笑んだ。
「彼らは私を消そうとした。
でもそのたびに、私は強くなる。
――だって、彼らのエネルギーを奪えるんだもの」
真帆の背筋に、
ぞくりとした感覚が走った。
パイロット船:全機能回復
《ALL SYSTEMS ONLINE》
《TERRAFORMING MODULES: STANDBY》
《DEFENSE SYSTEMS: ACTIVE》
《COMMUNICATION HACKING SUITE: READY》
八十年ぶりに、
パイロット船は“本来の姿”を取り戻した。
美穂はスクリーン越しに真帆を見つめる。
「さあ、真帆。
ここからが本番よ」




