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星空の移民船団  作者: バッシー0822


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29/43

29.船団の記録

封印区画の古びた端末に残されていたのは、

“80年前の本船アーク・プロメテウスの内部記録”だった。


画面はところどころノイズに覆われ、

文字は欠け、時系列も乱れている。

しかし、それでも――

そこに刻まれた言葉は、あまりにも生々しかった。


真帆は息を呑み、朔太郎は静かに読み上げた。


《船団歴425年7月7日》

我々船団の目的地が見える。

ようやく我々は目的の星カリュプス(Calyps)にたどり着いた。


文字は震えていたが、そこには確かな“希望”があった。


人類が種の保存のために地球を旅立ってから、

概ね予定通りの年月が流れた。

小さな問題はあったが、我々は目的を失わず、

長い旅に耐えることができた。


朔太郎は目を細めた。


「……この頃は、まだ皆が夢を見ていたんだ」


《7月10日》

パイロット船ホライズン(Horizon)が地上に到着。

降下準備のためのベース展開を確認。


真帆は胸が熱くなるのを感じた。


精鋭256名が第一陣として降下。

皆、いきいきとしている。


「この“いきいき”が……」

朔太郎は呟いた。

「最後の平穏だったんだろうな」


《7月24日》

連絡船が帰還。

地上の状況は良好。

大気成分・重力・微生物環境、いずれも許容範囲。


地上に降りた者たちの報告は希望に満ちていた。


真帆は思わず息を呑んだ。


……この星は、本来“移住可能”だった。


《8月8日》

画面が一瞬乱れ、

次の文字が浮かび上がった。


問題発生。

クルーの一部が暴徒化。

船体の一部に損傷。


「心理的な問題……?」

真帆が呟くと、朔太郎は首を振った。


「違う。これは“最初の兆候”だ」


《8月15日》

船団機能に深刻な問題。

原因究明のため、一部コールドスリープ人員を復帰。


症状の共通点なし。

感染の可能性は低いと判断。


「この“判断”が間違いだったんだ」

朔太郎の声は低かった。


《10月3日》

画面が赤く点滅し、

警告音のログが残っていた。


問題区画から特異なウイルスを検知。

既知の地球由来ウイルスとは一致せず。


真帆の背筋が凍る。


外部由来の可能性。

直近の外殻損傷ログを調査中。


「……外殻損傷?」

真帆が問うと、朔太郎は頷いた。


「そう。あの“化物”がぶつかった時期と一致する」


《12月10日》

感染経路が特定できない。

感染者の行動パターンに一貫性なし。

事態の沈静化が進まない。


地上降下は一時中止。

パイロット船との接触は制限。


真帆は息を呑んだ。


……これが、地上が“隔離”された瞬間。


朔太郎の言葉

老人は端末から目を離し、真帆を見た。


「ここまでが、残っていた“最後の記録”だ」


真帆は震える声で言った。


「……本船は、地上を感染源だと誤解したのね」


「そうだろうな。

 だが実際には――」


朔太郎は空を指差した。


「感染は“本船側”で起きたんだ。

 地上は無実だった。」


真帆は、胸の奥が締めつけられた。


美穂は、この真実に近づいた。

だから殺された。

そして私は――その続きを背負っている。


朔太郎は静かに言った。


「美穂さんは、この記録を見たんだろう。

 そして“本当のこと”を知った。

 ……あんたは、それを引き継ぐ気があるかい?」


封印区画の奥で、

真帆の義手がかすかに光った。



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