19.秘匿回線
タブレットの画面に浮かんだ文字は、
まるで“この世界の裏側”が突然口を開いたようだった。
秘匿回線を接続しました
真帆の手の中で、タブレットが低く震えた。
《秘匿回線を接続しました》
《最新データをダウンロードします》
その無機質な文字列は、
この場所がただの“田舎の村”ではないことを、
改めて突きつけてくる。
……秘匿回線?
誰が?
どこへ?
真帆は思わず周囲を見回した。
だが、センターコアの周囲には誰もいない。
ただ、風が古びた外殻を鳴らしているだけ。
本船との通信履歴
画面には、見覚えのある単語が並んでいた。
《本船コアユニット:応答待機》
《外殻維持班:第七区画異常報告》
《ピケットベース:通信断続》
美穂の日記にあった言葉だ。
船団本部……
ピケットベース……
外殻維持班……
そして、決定的な一文。
《本船は現在、フランティア32上空に停泊中》
真帆は息を呑んだ。
……上空に“船”がある?
それも、村全体を監視できるほど巨大な?
理解が追いつかない。
だが、ひとつだけ確かなことがある。
この村は、宇宙船の“付属区画”のようなものだ。
真帆の混乱と、小春の無邪気さ
「小春ちゃん、もうここはいいわ。
そろそろ帰りましょう」
真帆はタブレットを閉じ、
動揺を悟られないように微笑んだ。
小春は嬉しそうに手を握ってくる。
「はい、お母様」
その無邪気さが、
逆に胸に刺さる。
この子は、この世界の“真実”を当たり前に知っている。
私だけが、何も知らない。
見守る影
二人がセンターコアを離れ、
村へ戻る道を歩き始めたとき。
古びた外殻の影の中で、
ひとつの視線が彼女たちを追っていた。
その目は、
真帆の左腕――LM-01A1――に強く焦点を合わせている。
まるで、
「それは本来、私のものだ」
と言わんばかりに。
真帆はまだ気づかない。
だが、
“美穂の死”に関わった者が、
すでに彼女の存在を察知していた。




