十話:聖徒管理本部 強襲(上)
ーー 本丸の防衛線
聖典議会の心臓、『聖徒管理本部』へと瞬時に移動した俺たちを待っていたのは、世界の魔力が集中する、最も厳重な防衛線だった。ここは単なる施設ではない。女神の力そのものが具現化した、聖典議会の絶対的な牙城だ。
俺:「アヤメ。解析を」
アヤメ:「解析完了です、サトル様。ハルカのゲーム知識と照合したところ、この本部の防衛は全自動の魔力兵器で守られています。特に、『聖女の祈り』によって具現化された『四柱の天使』は、存在そのものの定義を無効化する結界を展開していますわ!」
ハルカ:「ひぃ! 『四柱の天使』は、ゲームの隠しラスボスです! 全パーティーの魔力をゼロにする『デバフ』を常に発動しています! (きゃー! 今回は本当に逃げたいですぅ!)」
俺は要塞の王座から冷徹に命令を下した。
俺:「臆病風に吹かれている暇はない。これは最高の訓練だ。セシリア。お前は武力で敵の注意を引きつけろ。アヤメ、ハルカ。お前たち二人は、武力以外の方法で、天使の結界を論理的に破壊しろ」
セシリア:「ちっ……武力でトリですか。最高の屈辱です! だが、主の命令と規律のため……武人の誇りにかけて、全力で足止めしてご覧に入れましょう!」
セシリアは聖剣のエンブレムを光らせ、単身、四柱の天使へと突撃した。
ーー 勇者セシリアの奮戦
セシリアが天使たちの前に立つと、天使たちはその神々しい光を増し、セシリアの魔力と武力を封じる結界を展開した。
セシリア:「くっ! これが『対チート兵器』を無効化する力……! だが、私は純粋な武力を捨てるわけにはいかない!」
セシリアは魔力がゼロにされた状態にも関わらず、鍛え抜かれた肉体と純粋な剣技だけで天使たちを相手にした。彼女の剣は風を切り裂き、天使の光の刃と互角に渡り合う。
ハルカ:「ゲーム知識ではセシリアさんの純粋な武力はSSSランクです! ですが、四柱の天使には自己再生があり、一分以内に結界を破らなければ…… (もうだめだぁぁあ!)」
セシリアは天使の一体の一撃を紙一重でかわし、その聖剣で天使の腕を切り裂いた。しかし、天使は一瞬で再生する。
セシリア:「ちっ、終わりが見えない……! これが神の力か! サトル様! 早く……早く私を助けるか、この屈辱を終わらせてください!」
セシリアの屈辱的な懇願が、要塞内に響き渡る。
ーー 知性による論理破壊
セシリアが命懸けで稼いだ時間の中、ハルカとアヤメは焦燥に駆られながらも能力を使い続けた。
アヤメ:「ハルカ! 天使の結界は、『存在の定義の無効化』を司っていますわ。量子的に不可能な現象を論理的に打ち破る必要がある!」
ハルカ:「ひぃ! 論理的? 私のゲーム知識には、天使は『特定の条件を満たすとフリーズする』というバグの記述しかありません! (バグじゃ論理的じゃないよぉ……!)」
アヤメ:「バグこそ論理の穴です! そのフリーズ条件を全てリストアップしなさい! 『概念物質化』で、その条件を満たす理論上の物質を一瞬だけ生成する!」
ハルカは恐怖に耐えながらも、涙と鼻水まみれになりながらゲーム知識を必死で解析する。
ハルカ:「うう……ゲームの裏設定では、天使は『無限に自己矛盾を抱えたパラドックス』を直視するとフリーズします! そのパラドックスは……!」
アヤメ:「パラドックス……! なるほど……! 『概念物質化』で、アインシュタインの相対性理論と量子力学が同時に矛盾しない理論上の物質……『シュレディンガーの猫の亜空間版』を生成しますわ! 理論の崩壊を、天使に押し付けてやる!」
アヤメは狂喜の悲鳴を上げながら、崩壊しかけの理論を元に、理論上存在しないはずの物質を、一瞬だけ生成した。
その瞬間、四柱の天使が展開していた結界に亀裂が走る。セシリアは辛うじてその結界の外に退避した。
セシリア:「くっ……やりおったか……! これが、武力ではない知識の力……!」
天使たちは自己矛盾によって行動がフリーズし、その場に静止した。
ハルカ:「(よかった……!) ひぃ……ワープ……ワープは……サトル様が……」
俺:「ワープの許可はまだだ。良くやったハルカ、アヤメ。そしてセシリア。あとは俺の番だ」
俺は、天使の存在そのものを、「最高の接客ロボット」へと上書きするため、静かに王座から立ち上がった。
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