第11話 魔力測定試験
会場内は、ひどく陰鬱な空気が流れていた。学校という普段は明るい雰囲気の場所だからこそ、その異常さが際立っている。
周囲にいるのは、私と同じぐらいの年の子どもたちばかりだ。どの子も暗い表情をしている。
誰かの名前が呼ばれるたび、少しずつ列が進む。前の方に行くにつれて、周囲の子どもたちの表情は悲壮なものになっていく。泣きそうになっている子もいる。斜め右前にいる小さな男の子は、顔が真っ赤になって、泣きそうになっているのを必死にこらえている。もしも魔力量が基準値をオーバーしていたら、死が確定してしまうのだから、泣きたくなる気持ちはわかる。
「次、前へ」
ついに、次が私の番だ。自分の心臓の音がやたらと大きく聞こえてくる。呼吸も安定しない。お父さんの機嫌を損ねないために、散々練習して身につけたポーカーフェイスも保ちきれていないだろう。深呼吸をして、呼吸を一旦整える。……大丈夫。大丈夫だ。今までの試験でも、魔力量は平均以下だったじゃないか。そんなに急に魔力量が伸びるようなことなんて、ない……はずだ。
「次。アリス・エイベル。前へ」
一瞬、誰を呼んでいるのかわからなかった。いつの間にか苗字が変わっている。いつ手続きを済ませたのだろう。そんなことをする余裕はなかったと思うし、リマイスさんは街にも行っていないはずなのだが。
とにかく、自分の番だ。自分の番になってしまった。手にじわりと汗が広がる。口の中が乾燥している。こんなにも緊張するのは、前回の測定以来だろうか。
目の前の机には、仕組みがよくわからない機械に繋がれた、太いバンドルのようなものが置かれている。机の後ろには、豪奢な服を着た大柄の男───測定官が立っていた。測定官が、私の手首にバンドルを装着する。装着した瞬間、自分の中にある大切ななにかが減っていくような感覚がして、思わず顔をしかめる。何度も受けているが、この感覚だけはいつまで立っても慣れない。
バンドルを装着してから1分ほど経過した。魔力量が出たようだ。
「基準値未満だな」
その声に胸を撫で下ろす。もしも、基準値以上だったら。それを考えると、ゾッとする。
しかし、その安心もすぐに覆された。
「が、平均よりもかなり高いな。基準値にかろうじて届いていない程度だ。注意するように」
一気に目の前が暗くなる。今年は一応基準値未満だったが、来年は?再来年は?……果たして私は、15歳まで引っかからずに生きられるのか?去年から今年の間で相当魔力量が増えているはずだが、今後何年も同じ伸び方だったら……?
出口まで進む足が、鉛のように重かった。
外に出ると、リマイスさんとヒューゴが立っていた。
「おかえり。良かった、通過できたんだね」
「…姉ちゃん、なかなか出てこないから、心配だった」
無理やり顔を笑顔にして、会話を続ける。
「少々時間がかかってしまって。待たせてしまいすみません」
以前受けたときよりも人が多く、待ち時間が長かったのだ。年齢ごとに並ぶ列を分けたりなどもしていなかった。以前の試験会場よりも管理が杜撰だ。試験官も、豪華な服を着てはいたが、国家直属には見えなかったし。
「大丈夫大丈夫。それより、長く立っててお腹が減ったでしょ。ご飯を食べに行こう」
ご飯の話を聞いて、暗く沈んでいた気持ちが一気に明るくなった。やはり人間はご飯を食べなければ生きていけないのだな、と実感する。
「了解です!」
「よし、じゃあ出発しよう!」
お昼ご飯を想像しながら、少し歩いた。歩いていると、すぐに大通りに出た。道沿いのどの建物もとてもきれいでおしゃれなものばかり。ショーケースには、キラキラしたアクセサリーや、海のような色のドレスが飾ってある。
ふと空を見ると、いつの間にか日が高く上っていた。雲一つ浮かんでいない、清々しい陽気だ。吸い込まれそうなほど青い空の中で、太陽だけが燦々と輝いている。




