表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

出来ないよ

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

喚かないのが~。の二人。


彼女の決定的な感情を自覚する話。

故に“今は”バッドエンドです。

時計を見ると午後二時。母達が帰ってくるまで時間がある。大丈夫。この間の様に弟が乱入して空気が壊れる。なんて事は起こらない。大きく深呼吸をすると、前に座る彼の表情を凝視する。

「あ……あの……」

頑張れ。恥ずかしがるな。何時かは絶対聞かなければならない事なのだから。そう、自分を叱咤して、私は目に力を込めた。

「恋人としては求めるのってどの範囲……?」

言われた彼は唖然として、口をぽかんと開いた。一体何が言いたいのか。と顔に書いてある。

友人と恋人の違いというのを私はイマイチ分かっていない。友人間だって手を繋ぐ、抱き締める。『お食べ』だって。キスは……しないかも知れないけれど、海外ではありそうな気がする。今までその範囲まではしてきた。でも……。

「手を繋ぎたい。抱き締めたい。キス……したい……。それ以上……の……事……とか」

「今言ったこと、全部したい」

消え入りそうな声をぶった切る様に彼の凛とした超えが部屋中に響き渡る。時が止まる予感がした。その癖、血流だけは二倍速で短針が回る。怖気付く。という言葉を通り越して、呆然とした事は、頭では分かっていた。

大丈夫。混乱していることが分かっているならば、落ち着ける事も出来る。まずは息を吐いて、其れから吸って。それで……思考が明晰になる。

彼が異性として私を見ている事を知っている。其れに胡座をかいて、親愛止まりな事を続けていたのは私の方。だから最初に抱き締めた。キスするのは早かったから。でも。

私は彼の頬に手を当てる。見詰め合うと、彼の慈愛に満ちた瞳があった。自分から顔を近付ける。ゆっくり、ゆっくり、顔を近付ける。

「目……閉じて……」

「ん」

もう何度も見てきた顔。病める時も健やかなる時も見てきた顔。でも……でもだからこそ……。

「出来ない……出来ないよぉ……」

ずっと傍に居てくれて、優しくしてくれて、気遣ってくれて、其れが心地好かった。だから恋愛的な感情を持つ為に、デートもした。けど……そんな行動を自分から出来ない。

彼の目が開く。期待していた分、少しだけ傷付いた様な表情。私は彼の気持ちを突き落としたのだ。其れも手を振り上げて、高いところから。

「あ……御免なさい……」

泣くんじゃない。泣きたいのは彼の方なんだから。けれども混乱した感情は涙に代わり、其れを誤魔化す様に俯いた。顔を上げるきっかけをくれたのは、私の手に彼の手が触れた時だった。

彼の手は私の掌を包み込むと、自分の胸元まで引き寄せる。

「頑張ってくれるのは嬉しいけれど、焦るのを見るのは好きじゃない。俺が見たいのは、気ままに、人に気を遣わず、気ままに生きるお前だ」

そう言って、黙って手の甲にキスをした。

「傍に置いてくれて有難う」

彼女が『親愛』だと自覚したシーン。

だからこそ、『恋愛感情を伴ったまま』、『自分から』キスする事は出来ないんです。


でもね、曲りなりにも『彼女の方から』キスを試みているんです。

そりゃー長らく片思いを続けていた相手からしたら、『待っていたんだよ、この時を!!』という感想。

それでも其れが『出来ない』と言われたら、期待していた分、無茶苦茶ショックだよなぁと。

だから高い位置から突き落とす。という意味なんです。


流石の彼もショックを受けてます。

でも彼が言ったことが何より本心。

『我儘言って欲しい。今までずっと自分を殺し続けてきたんだから』

親愛でも傍にいて欲しい。居ないとヤダ。他は全て潰す。

其れが彼だと思うよ。


明日こそ母が帰ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ