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ラビット•フッカーズ〜裏社会を駆ける二人の兎〜  作者: 二階堂曉


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15/15

第15夜「愛しのレナ」

「今日はありがとう!撮影が終わったら君達も是非試写会に招待させてもらうよ!」監督の話を聞き始めてから3時間、気が狂いそうになる一歩手前でようやく話が終わった。


レナは既に倒れ込み意識が無く、そのレナを抱き寄せながら監督の話を聞いていたソフィアも目の焦点が合わなくなっていた。そんな二人を他所に監督は意気揚々と話し終えるとソフィアの手に今月の売上金のは入った封筒を握らせる。


「あ、ありがとうございます、、、レナ起きて?起きてよ!」ソフィアに譲られレナが起きるそして二人はにこやかに手を振りながら見送る監督に目もくれず、逃げるようにその場を後にした。


「あの映画狂いめいつか必ず殺ってやる、、必ず、必ず思い知らせてやる」レナが1人俯きながら呪詛のように監督への恨みの言葉を吐き続ける。


「レナ、大丈夫?何だか凄く顔が怖いけど」ソフィアが恐る恐るレナに語り掛ける。その言葉を聞きレナが顔を上げ何時もの冷静な顔に戻る。


「ごめん、大丈夫だよソフィア次で最後だから行こうよ」レナがそう言いながらソフィアの手を繋ぎ最後の集金場所へと向かった。


「いらっしゃい、レナか?久しぶりだな何の用だ?」再び歓楽街へと戻った二人は路地裏にあるバーへと来ていた。


「久しぶりトラスカ、オーナー居る?」レナが聞くとバーテンダーの女性トラスカがスタッフ専用ルームを指差す。


「オーナーなら地下に居るよ」レナはトラスカに一瞥するとソフィアを連れスタッフ専用ルームへと入って行った。


専用ルームの奥の階段を降りて行くと大きな歓声が聞こえて来る。「ここ地下だよね?何なのこの歓声は?」


ソフィアが少し怯えながらレナの肩に手を置く。


レナは「行けば分かるから」と言って地下の階段を降りきった先の扉を開ける。


扉の先には円状に囲まれた観客席と多くの観衆、そして観衆の見つめる先には金網に囲まれた闘技場があった。


闘技場の中では派手なコスチュームを着た女性ファイターが激しく殴りあい、血が飛び散っていた。そしてその凄惨な光景が起こる度に地下に地鳴らしの様に響く歓声が響き渡る。


ソフィアが耳を手で押さえながらレナに聞く。


「何なのここ!?あの中の女の子達何で殴りあってるの!?」ソフィアの質問にレナが答える。


「ここはミッシェルストリートで一番盛り上がる賭場何だよ、皆ファイターに賭けて大金を稼ぐうちの店のシノギの中で一番稼げる場所なんだ」レナが腕を前で組みながら説明してくれる。熱狂するその場を抜け二人はオーナーの待つ事務所へと向かった。事務所は闘技場を見下ろせる場所に有り二人は続く階段を上がって行った。


「オーナー、駄目ですよこんなところでなんて、、」


「どうしてだい?見られる方が君も興奮するだろう?」


事務所の中から艶のある声が聴こえてくる。 


「そ、それはオーナーにだけ私の全部を見て欲しいんです、他の人になんて見られたくありません」


「フフ、可愛いね分かったよそれじゃあベッドに行こうか、君が可愛いく乱れる所を僕にだけ見せてよ」


事務所の人物が盛り上がってる事も知らずレナが事務所の扉を開け放つ。


「オーナー居る?あ、ごめんお取り込み中だった?」レナとソフィアが入ると。


長身のクールな女性と服がはだけ半裸状態の眼鏡の女性が居た。


「すまないね、久しぶりに会ったのに変な所を見せて」


長身の女性が椅子に座りながら言った。


「私もごめんね、いきなりノックもしないで入っちゃって、さっきの人は大丈夫?」レナが入ると眼鏡の女性が悲鳴を上げそそくさと部屋を出てしまっていた。


「彼女なら大丈夫後で僕が埋め合わせしておくからね、それで今日はなんの用だい?」


「今日は売上の回収に来たんだ、それと新しく入った新人の子の紹介をしたくてね」レナに促されソフィアが挨拶する。


「初めまして!新入りのソフィア・ルチアーノと申します、よろしくお願いします!」ソフィアが礼をしながら言うとオーナーも少し笑みを浮かべながら言う。


「ソフィアちゃんか綺麗な子だね、僕はこの賭場を仕切らせて貰っているベロニカ・ウォルコット。ベロニカと呼んでくれ」ベロニカが手を差し伸べながら言った。


ソフィアも手を差し出し握った瞬間、勢い良く引っ張られベロニカの胸元へと引き寄せられた。


「え?ええ!?な、なんですか!いきなり!?」ソフィアが慌てて離れようとするがレベッカが抱きしめ離さない。


「いきなりでごめんね、君が余りにも美しくって我慢出来なかったんだ、どうかなこれから僕と甘い夜を過ごさないかい?」切れ長で優しい瞳と端正な顔を向けられソフィアの顔が赤くなる。


「お断りします!それに私達初対面じゃないですか!そんないきなり口説く人とそう言った事は出来ません!」


ソフィアが目を瞑りながら言うと、そっと離され二人共立ち上がる。


「それもそうだね、怖い思いをさせてしまったらごめんね、でもいつか僕に抱かれても良いと思ったら何時でも連絡してよ」そう言うとベロニカはソフィアを解放しついでにソフィアに自らの連絡先の描かれた名刺を渡す。


「振られちゃったねベロニカ」静かに見ていたレナがイタズラっぽく言う。


「無理矢理するのは趣味じゃないからね、それに向こうから僕を求めてくれた方が燃えるだろう?」ベロニカはベリーショートに切り揃えられたブロンドの髪を直しながら言った。


「ベロニカは紳士だね、それに比べてうちのオーナーは見境ないんだよね」レナがマリアの事を思い出しながら溜息をつく。


「オーナーと比べたら駄目だよ!それに私も正直嫌じゃ無かったから」ソフィアが頬を染めながら小さく呟く。


「あんな下品な女と比べ無いでくれよ、それに僕がこの賭場を仕切らされているのも全部あの女のせいだしね」


ベロニカも嫌そうな表情を浮かべながら言う。


「ベロニカさんはこの賭場を仕切るのは嫌なんですか?」ソフィアが聞くとベロニカが良くぞ聞いてくれたとばかりに話す。「勿論さ!金網に囲まれた闘技場で乙女同士殴りあうだなんて正気の沙汰じゃないよ、それに観客共も下品で悪趣味な連中だし、毎日気が狂いそうになるよ」ベロニカがうんざりした様に言った。


「ならなんでベロニカさんはこの賭場を仕切っているんですか?」それを聞くとベロニカが苦虫を潰した顔をする。


「それは私も聞いた事無かったね良かったら教えてよレベッカ?」レナもその話題に興味を持ち聞く。


「分かったよ今日は特別に君達二人の為に全部話すよ」


レベッカが羽織っていたジャケットの内ポケットからタバコを取り出し火を着ける、そして二人に過去を話した。


5年前、、マリアとアンナがこの街で娼館を開いて間もない頃だった。二人は街の利権をファルコーネから貰いシノギを始めたのだが、長年ファルコーネの元商売を行っていた者達からは反感を買っていた。


だが二人は誠心誠意地元の者達と話を付け徐々に二人に反感を抱く者は居なくなっていた。だが1人だけそれを良しとしていない者が居た。


「それがここの前オーナーのジャック・キンバリーと言う男だったのさ」ベロニカが不快そうな表情を浮かべながら言う。


キンバリーの行う賭場はこの街一番の賑わいを見せており、ファルコーネもキンバリーの行う事を全て黙認していた。そしてキンバリーもその見返りとしてファルコーネに多額の上納金を貢いでいた。


「当時この街はファルコーネの縄張りだったけど、実質的な支配者はキンバリーだったんだよ、誰もヤツに逆らえないし奴もそれを知って好き勝手やってたんだよ」


そしてマリアとアンナもキンバリーに話をつけに行ったのだが、キンバリーは門前払いそれ何処ろかバニーズ・ヘブンへと嫌がらせを行っていた。


「そして二人共も我慢の限界に来てキンバリーの所に乗り込んだ、そしてキンバリーはあるゲームに勝てたら二人に従うと約束したんだ」


「そのゲームって何ですか?」ソフィアが聞くとベロニカが咥えていたタバコを灰皿に捨てて言った。


「当時の闘技場のチャンピオンに勝てたら従う、もし負けたら二人はキンバリーの玩具になるって条件だったんだ」


「そのチャンピオンってもしかして」


「そう、僕だよ」ベロニカが静かに答えた。


「当時は僕も荒れていてね、金の為なら何でもやってきたんだそれこそ人殺しでも何でもね、そんな時にキンバリーに拾われてファイターになって気付いたら無敗のチャンピオンになってたんだよ」今のベロニカからは想像できない話を聞き二人が顔を見合わせる。


「勿論今は引退してるから怖がらないでね、それでキンバリーに言われるがまま僕はマリアと戦う事になったんだ」


「それでベロニカさんは負けたんですよね?」ソフィアが聞くとベロニカが声を上げて笑う。


「うん、完敗だったよマリアに鳩尾を殴られて屈んだ瞬間に首を掴まれて叩きつけられたんだ。あの時の僕を見下ろしながら笑うマリアを思い出すと今でも腹が立つよ」


「そんな話聞いた事無かったよそれで、その後どうなったの?」レナが促すとベロニカが続ける。


「キンバリーの奴ったら僕が負けた瞬間に激昂して、傍に居たアンナを殺そうとしたらしいんだ、でも逆に皆アンナに斬り刻まれて誰が誰だか分からなくなったんだよ」その話を聞いて二人の脳裏に浮かぶ優しいアンナの印象が変わった。


「その後僕はマリアに運ばれ彼女の部屋で口説かれて抱かれたんだ。」怒涛の展開について行けず二人の思考が停止する。


「えっと、いきなり話が進み過ぎちゃって理解が追いつかないんですけど、つまりベロニカさんもオーナーの毒牙に落ちたんですか?」ソフィアが焦りながら言う。


「まあ、あの時の僕も彼女に負けたショックで傷付いていたし、半分ヤケクソになってたんだよでも彼女は終始優しくてね僕も初めてだったけど気付いたら彼女を求めてしまっていてね、気付いたらそうなっていたんだよ」


「本当にマリアったら誰でも良いんだね、少し距離置こうかな」レナが真顔で言う。


「まあ、そのお陰で僕も女の子同士の良さに気付けたし感謝しているけど。流石に手当たり次第に手を出すのは如何なものかと思うんだ」ベロニカも静かに呟く。


「それでキンバリーが消えた後を僕に任せたいって言われて、僕も彼女に負けたし従う事にして今に至るんだよ」ベロニカが語り終えるのと同時に闘技場にゴングが鳴り響き決着がつく。


「話を聞いてくれてありがとう、売上金だったよね?」ベロニカが机の引き出しから分厚い封筒を出す。


「ありがとうベロニカそれじゃあ、また今度、、」レナが封筒を受け取りソフィアが会釈する。そんな二人をベロニカが「また何時でも遊びに来てよ」とにこやかに送り出している時だった。事務所の扉が明け放たれ誰かが凄い勢いで入ってくる。


そしてその人物はレナを押し倒す。


「痛、いきなり何?」


「私を無視するなんて酷いよ!今日こそは逃さないよ私の愛しのレナ♡」薄水色の髪をポニーテールにした少女がレナに熱い視線を送りながら見下ろす。


「大丈夫レナ!?」ソフィアが急いで駆け寄る。


「相変わらず情熱的だね、ソフィアちゃん余り彼女に近付かない方がいいよ?」ベロニカに呼び止められソフィアがその場に立ち止まる。


「分かったからどいてよ!」


レナが無表情に言う。「そんな事言って逃げるんでしょ?」少女がそのままの状態で言う。


「でもそれよりも一つ聞いて良い?」少女の雰囲気が変わりソフィアの方に顔を向ける。


「その女誰?」その顔はさっきまでレナに向けていた恋する少女の顔では無く。獲物を取られまいと殺気を放つ獣のような表情で見ていた。


第15夜 完


第16夜に続く。

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