第10夜 「夜遊びにはご注意」
「さあ、マギーちゃん怖くないからやってみようか」
「え?でも私初めてでやり方が分からなくて」
マギーが戸惑いながら言った。
「大丈夫、私が手取り足取り教えてあげるからね」
マリアがマギーを抱き寄せる。
「待って、私どうなっちゃうのか怖いの」
マギーが震えるながら言った。
「安心して一緒にやってあげるから二人なら怖くないでしょう?」マリアの優しい笑顔にマギーが無言で頷く。
「そんな演技良いからさっさと投げなよ」
アンナが呆れたように言った。
「だってマギーちゃんがやった事無いって言うから〜」
「はぁ、見ててよお嬢様」アンナは近くにあったダーツを一つ取るとノーモーションで投げた。
ダーツは的のど真ん中に辺りスコアが0に変わった。
「ああ!せっかくマギーちゃんと一緒に投げてたのに!」マリアが残念そうに声を上げる。
「いえ、初めてで不安だったけど二人のおかげで楽しかったよ」マギーが無邪気に笑う。
「「可愛いなぁ」」
二人がマギーの笑顔を見て声を漏らす。
3人はパーティー会場を抜け出した後二人の行きつけのバーに来ていた。そこで店にあったダーツゲームに興味を持ったマギーに二人が教えていたのだ。
「次は何処行こうか?」
「そうね、でも私こうやって同年代の子と一緒に居るだけで楽しいな」マギーが楽しげに呟く。
「友達とか居ないの?」アンナが聞く。
「うん、私のお父様はこの街の権力者の一人でしょう?だから皆怖がって関わろうとしないの」マギーが少し寂しげに言った。
「私達も一緒だよ産まれてからずっと二人で生きてきたんだ、クソッタレな孤児院から逃げ出して路地裏で死にかけていた時にジョーに拾われたんだ」
マリアがあの日の事を懐古する、ジョーは約束通りアンナを直ぐに医者に見せてくれたうえにマリアに絶品のパスタを食べさせてくれた。無我夢中で食べるマリアをジョーは嬉しそうに見ていた。
「まあ、そのおかげで今じゃあ立派な掃除屋何だけどね」マリアが軽く笑う。
「二人共あっちの広場でフェスティバルがあるらしいよ行ってみない?」アンナが二人に声をかける。
「それは良いね!マギーちゃんも行こうか?」
「うん行く!」3人はネオン街を抜け温かな光が目立つ広場へと向かった。
3人は様々な露店を巡り見て廻った、見たことの無いアクセサリーや露店には定番の的あてや輪投げなど傍から見れば子供っぽい出し物でも3人にとっては初めての連続で大いにはしゃいでいた。
「楽しかったね」マギーがアンナに取ってもらった景品のぬいぐるみを抱きしめながら言った。
「また3人、いや今度は沢山友達作って来ようよ」
「私に出来るかな」
「絶対出来るよ!だって私にとって二人は初めての友達だもの」マギーにそう言われマリアとアンナが顔を見合わせて笑った。
「うん、そうだね私達もう友達だね」
「改めてよろしくねお嬢、いやマギー」
二人はマギーの手を取りながら言った。
「所でマギーちょっと頼み事していいかな?」
「良いけど頼み事って何?」
「私達ちょっと実は今日何も食べてないんだ」マリアが腹を撫でながら言った。
「だから何か適当に買ってきてくれない?」
アンナも申し訳無さそうに言った。
「良いよ、何かリクエストある?」
「そうだね出来るだけ沢山買ってきてくれると有り難いかな、お金はこの中にあるからさお願いね」マリアが財布を渡しながら言った。
「分かった、ここで待っててね」マギーが露店の人混みに消えるのを見届ける。
「本当に良い子だね」
「うん、だからこそ悪い虫は消さなきゃね」
二人はそう言って広場の奥の暗い路地裏へと向かった。
「出てきなよ素人過ぎてバレバレだよ」マリアが言うと背後から6人の男達が現れた。
「こんな暗がりに誘うなんて手間が省けるぜ!」
二人が振り返ると顔に包帯を巻いたブランドンが居た。
「何その顔?ミイラ男のオーディションでもうけるの?なら合格だね笑」マリアが笑いながら言うとブランドンが激昂する。
「ふざけんじゃねえぞこのアバズレが!お前等のせいで俺の俳優人生終わりだよ!今からこいつらに可愛いがってもらえよ」ブランドンが言うとチンピラ達が出る。
「おい、おい、中々上玉じゃねえかよ」
「良いね〜気の強い女を殴って犯すのが好きなんだよ!」
「お嬢ちゃん達俺の息子が寂しいって言ってるからよ慰めてやってくれよ!」
男達が口々に下品な言葉を並べる。
「絶対に許さねえからな!お前等を犯って殺した後はあの小娘にも同じ事してやる!あの小娘はこいつらの慰み物にしてやるよ一生肉便器として可愛いがってやるよ!」ブランドンが復讐に満ちた顔で言う。
「あんた、前よりも見た目と中身が相まって良い男になってるよ」
「そうそう、蛆虫にはぴったりだね」
二人が路地裏に響く程笑い声を上げる。
「殺す!やっちまえ!」ブランドンの合図で一斉に男達が襲い掛かる。
「それじゃあいつもの様に」
「5分で終わらせようか」
二人は手袋を嵌めて迎え撃つ。
二人は左右に別れると一人ずつ相手にする。マリアはナイフで斬り掛かる男の手を腰に巻いていたベルトで叩く、痛みでナイフを落とし屈んだ瞬間男の顔面をつま先で蹴り抜いた。男の顎が砕け盛大に血と歯をばら撒く。
それを横で見ていたアンナも笑みを浮かべながら殴りかかる男の腕を肘と膝で挟む形で叩きつける。男の腕から骨が飛び出し痛みで悶絶する。アンナはそれを見逃さずガラ空きになった膝を思い切り踏み付けるすると男の足がくの字に曲がり痛みからのたうち回る。
そして残りの2人もそれぞれ首を掴み膝蹴りを入れ、もう一人は二人でヒールの先で性器を踏み付ける。「パキョ」っと乾いた音と共に男が白目になり泡を吹いて倒れ痙攣していた。
「お前等、なんなんだよ!」
「私達はね」二人が息を合わせて答える。
「「ラビットだよ!」」そして青ざめた顔をしたブランドンの顔面目掛けて二人が拳を振り抜く、拳はブランドンに命中しその身体が後ろのゴミ箱に吹っ飛ぶそして蓋が閉まりブランドンが出てくる事は永遠になかった。
「お待たせ2人とも!あれ?なんだか疲れてない?」
マギーが両手に露店で買った食べ物の袋を持って来た。
「ううん大丈夫だよ、ありがとうマギーちゃん」
「一緒に食べようよマギー」
「うん、友達とご飯食べるの憧れてたんだ!」
マギーの無邪気な笑顔を見て2人は我慢出来ずに抱きしめる。
「え!?いきなりどうしたの2人共!?」マギーが困惑する中2人が言った。
「「やっぱりマギーは天使だね」」
フェスティバルのランタンに照らされながら3人は初めての夜遊びを楽しんでいた。この笑顔の為なら何度でも頑張る事が出来る。
2人はそう思いながら初めて出来た友達を抱きしめていた。
第10夜 完 第11夜に続く。




