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ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました  作者: 江本マシメサ
番外編

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17/21

ハロウィンパーティーをしよう!

 庭が紅葉していく様子を眺めていると、秋を迎えたんだな、と実感する。

 ふと、前世についての記憶が甦ってくる。

 クリスマスシーズン前のレストランはどうしても、閑散期となってしまう。

 どうにかしようとオーナーが考えた結果、ハロウィンディナーを出そうと提案してきたのだ。

 あの時は、嫌になるほどカボチャの下ごしらえをした。

 オーナーの目論見は当たり、ハロウィンが憎くなるほどお店は大繁盛したのだ。

 お店の外にイチョウの木があったので、紅葉の季節を迎えるとついつい思い出してしまう。


 幸いにも、異世界にはハロウィンはない。

 ホッとしたのもつかの間のこと。


『アステリアよ、〝はろうぃん〟とはなんだ?』

「ひっ!」


 いつの間にか、足元にリュカオンがいたようだ。

 聖獣である彼は私の脳内を勝手に覗き込み、異世界について興味を示したのである。


「ハロウィンというのは、起源はわからないけれど、トリックオアトリート――おかしをくれなければいたずらするぞ、と脅しておかしを貰ったり、それぞれ好きなものに仮装したりする催しよ」

『おお、楽しそうだな! ここでも開催してみたいぞ!』


 大変な記憶を視られてしまった。 

 けれど、自分のためのハロウィンなんてこれまでしたことがなかった。

 たまにはハロウィンパーティーをやってみるもの面白いかもしれない。


「いいわ、やりましょう」

『やったー!』


 そんなわけで、離宮で初めてハロウィンパーティーが開催されることとなった。

 そこまでハロウィンについて詳しいわけではないものの、それっぽいお菓子を準備してみる。

 カボチャのクッキーに、棒つきキャンディ、カップケーキにマシュマロブラウニー。

 これらをメルヴに配ってもらおう。

 イクシオンも誘ってみなければ。


「というわけで、異世界に伝わるハロウィンパーティーを開催するの」

「なるほど」

「何か仮装を用意しておいてくれる?」

「仮装だと?」

「ええ。自分が好きな恰好や、モンスターの扮装をするのがお決まりなの」

「ふむ、承知した」


 私も衣装部のメルヴ達に何か作ってもらおう。

 少々準備に時間がかかったものの、なんとかハロウィンパーティーの当日を迎えた。


 ◇◇◇


 リュカオンは蜜蜂の恰好で登場した。


「な、なんで蜜蜂?」

『アステリアの記憶の中に、このような蜜蜂の服を着た、我と同じ犬族を視たのでな!』


 それは蜜蜂の服を着せられたポメラニアンでは……?

 ハロウィンシーズン中のレストランのテラス席に、いたような気がする。

 私が選んだ服装は狼女である。

 リアルな耳と尻尾をメルヴ達が仕立ててくれた。


『なんだ、その恰好は。野良犬か?』

「失礼ね、狼女よ」

『違いがわからぬ』


 遅れてイクシオンも登場した。


「なっ!?」

『なんだ、あれは!!』


 イクシオンが選んだ扮装は、セミだった。

 リアルな着ぐるみで、かわいさは欠片もない。


「な、なんでセミなのよ!!」

「リスペクトだ」


 この世界にセミはいない。

 なぜ、イクシオンが知っているのかと言うと、以前、リュカオンが私の記憶を視たさいに『その〝せみ〟とやらは食用か?』などと聞いてきたのがきっかけである。

 野良猫が咥えて歩いていたので、食べ物だと思ったらしい。

 セミについて、七年間の幼虫期間を経て成虫となり、七日しか生きられない生き物だ、と説明したら、イクシオンが強く興味を示したのである。


「地中で七年もの日の当たらない場所で耐え、地上に出ても七日しか生きられないなど、なんて……まるで私の人生のようだ」


 セミの一生を、自分の人生と重ね合わせていたらしい。

 お願いだから、見たこともない異世界の昆虫に感情移入しないでほしい。


「アステリアよ、このセミの仮装はよくできているだろう? メルヴと協力して作ったんだ」

「ええ、とてつもないクオリティね」


 セミの裏側は少し気持ち悪いので、なるべくこちらを見ないでほしいと思ってしまった。


 メルヴ達もさまざまな仮装をしているようだった。

 コウモリに天使、騎士に姫など、バリエーションが豊富である。

 メルヴ達は私が作ったお菓子が入ったかごを持っていて、トリックオアトリートに対応してくれるようだ。


 リュカオンはさっそく、近くにやってきたメルヴに声をかける。


『トリックオアトリートだ!!』

『ハーイ』


 メルヴがカボチャのクッキーを差しだしたので、リュカオンはそのままぱくんと食べる。


『う、うまいぞ!!』


 まるで芸を成功させた犬のようだったが、楽しそうなので何も言わないでおいた。

 その後も、リュカオンはさまざまなメルヴに『トリックオアトリート』と言い回り、お菓子を貰っているようだった。


 その様子を微笑ましく眺めていたら、隣から声がかかる。


「アステリアよ、〝トリックオアトリート〟」


 セミ男こと、イクシオンが私に「おかしをくれなければいたすらするぞ」、と言ってきたのである。

 セミ男にいたずらされるのは、さすがに怖い。

 リュカオンにあげようと思っていた、カボチャの生キャラメルを差しだした。


「なんだ、おかしを持っていたのか」

「当たり前よ」


 セミ男はいたずらをしたかったのか、しょんぼりしていた。

 けれどもカボチャの生キャラメルを食べた途端に、笑みがこぼれる。


「なんだ、このキャラメルは。とんでもなくおいしいな」

「ふふ、そうでしょう。一時期、異世界でも流行っていたの」


 さすが、日本で大流行した生キャラメルである。

 今度は私が、イクシオン相手に言ってみた。


「トリックオアトリート」

「……」


 セミ男は急に黙りこむ。

 いつも、うるさいリュカオンを黙らせるために、アメ玉のひとつでも持っているのに、今日に限って何も持っていないようだ。


「仕方がない。アステリアよ、私にいたずらするといい」

「嫌なんだけど」

「それがハロウィンパーティーの鉄の掟なのだろう?」

「そんな強い縛りがあるものではないから」


 こうなったら、セミの着ぐるみを脱がしてやろう。

 そう思って背中のボタンを外したら、イクシオンは一糸まとわぬ姿で着ぐるみの中に入っているではないか。


「な、なんで裸なのよ!!」

「こういう着ぐるみは、中に服を着ているものなのか?」

「当たり前でしょう!?」


 なんだろう、この、いたずらが成功した気がしないのは。

 まあ、何はともあれ、リュカオンはハロウィンパーティーを堪能しているようだし、私も楽しめたような気がする。

 いい一日だった。  

「ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました」コミカライズ1巻が本日10月14日に発売となりました。

挿絵(By みてみん)

漫画を担当していただいたのは、ハマサキ先生です。

もっふもふのリュカオンに、ツッコミ冴えるアステリア、麗しいイクシオンなど、各キャラクターを魅力的に描いていただいております。

また、本日より、X(旧Twitter)にてリュカオンぬいぐるみプレゼントの企画が始まりました!

挿絵(By みてみん)

参加条件は紙コミックスをお買い求めいただき、X(旧Twitter)に購入写真と『♯リュカオンぬいぐるみプレゼントの企画』のタグを添えて投稿していただくだけです。(※電子書籍は対象外となっているようです)

期間は10月14日から、11月30日までとなっております。

3名様に当選するようです。ぜひともご参加ください。

ハマサキ先生が宣伝漫画を描いてくださいました!

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

特典もたくさんございますので、お手に取っていただけたら幸いです。

挿絵(By みてみん)

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