#47 手紙
「まずはこれ」
「これは…?」
アルがポケットから取り出したのは、深い青の封蝋のある手紙数通。
エルザに手渡して、開封を促した。
「俺の親から。要約すると『早く嫁になってね、待ってます』と書いてある。母からは特に『一緒にお買い物とか行ってみたいです』とも」
「よめ…?」
ヨメ。読め。夜目。あれ、よめって何だっけ?
一足どころか、二足も三足も飛び越したアルの両親が、エルザの脳内を翻弄する。
「あと、次期領主の次兄からは『愚弟がごめんね』、長兄からは『今度魔法についてお話しようね』…これは別に無視でいいか」
兄二人からの手紙はアルが開封して、じっくり検閲している。
手紙の内容は、どれも大変好意的なもので、エルザは戸惑いながらも、アルの家族からの優しさに心が温かくなる。
「あの日、俺が本気ってわかってもらうのに、正式に婚約を申し込もうと思って、エルザの事を家族に報告に行ったんだ」
「こんっ…」
ここにもいろいろと飛び越してる人がいた。
さすが親子。考え方って似てくるのね~、などと、エルザは思考を逃避させる。
「そしたら、ぜひ一言言いたいって、手紙を書いてくれた。家族は、俺の結婚を諦めてたから、すごく喜んで。祝いの会が開かれそうになったけど、それは辞退して逃げてきた」
酒が入ると長いんだよねと、アルが苦笑いする。
長い間、アルの苦悩を見てきた家族からしたら、祝いの会どころか祭りでも開かれそうな盛り上がりだったに違いないと、エルザは自分が当事者であることも忘れ、まだ見ぬ愛すべき人たちに思いを馳せる。
「断られるかもって、自信なかったんだけど、もう大丈夫」
アルの紫の眼は、真っ直ぐにエルザの顔を見据えていた。
表情は柔らかいが、瞳の奥には決意の色が見てとれる。
「俺は、この先もずっと、エルザと生きていきたい。君が考えてる一緒に居られない理由、一個ずつ俺と潰していこうか」
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