#44 みんなでお城に(2)
王城の部屋は、これまた豪奢だった。
やはり天井は高く、窓は大きい。部屋は古いが、手入れが行き届いていて、とても品のある雰囲気だ。
薄暗くなった部屋のランプが一斉に点灯する。魔法でともされたその明かりはじんわりとしていて、部屋が幻想的に彩られていた。
エルザはベッドサイドのイスに腰掛け、すやすや眠り続けるアルを眺めていた。
その手には、エルザが先程まで着ていた服が、いまだにしっかりと握られている。
ベッドに横になろうが何をしようが、アルの手が緩められることはなく、途方にくれるとエルザに、ロイが服を用意してくれた。
デイジーとマギーに助けてもらい、何とか着替えが出来た。
あのままでは彼の横に添い寝するような形になっていた。非常に危なかった。
アルはあの日した話を、どう考えたのか。
気がついただろうか。一緒にいれば居るほど、必ず来る別れが辛くなると言うことに。
それとも、エルザの言葉が嫌で、もう来ないと言われるだろうか。
起きたらすると言っていた話の内容を考えて、エルザはずーんと憂鬱に襲われる。
でも、決めたのだ。
自分の気持ちを伝えて、アルの話も聞いて話し合おうと。
1人考えていても、それは彼の思いではないのだから。
―――――アルさんの気持ちは、アルさんに聞かなきゃね
もぞ、と身じろぎしたアルは、図らずも手に持ったエルザの服を引き寄せた。顔の近くに来たそれに、すり、と額を寄せると、へにゃりと締まりのない顔で微笑んだ。
やっぱりこの人は、笑った顔がいいなぁ、そんなことを考えながら、ベッドに肘をつき、呟いた。
「私も、できるなら、一緒にいたいですよ…」
◇
いつの間にか、眠ってしまったようだ。
夜明け前、窓の外は薄明かるいが、陽はまだ出ていない。
エルザが顔を上げると、アルも起きているのか、体を起こしているのが見えた。
「…おはようございます、アルさん。体は大丈夫ですか?」
「エルザ!俺…」
血の気のない顔で、ワナワナと震えているアルに、エルザが慌てて声をかける。
「アルさん!?」
「俺、おれ…こんなこと」
アルの目線は、エルザの服を握りしめている自身の手に向いていた。
「…これが…、どうしました?」
「俺、これ、君の服を、ぬ、ぬ、脱が」
「脱がせてないです!」
「……ホント?」
「ホントです!自分で脱いだんです!」
「…よかった…。てっきり俺が、エルザに不埒な真似をしたのかと思ったよ」
朝からそんな恥ずかしいこと言わないでほしい。
顔を赤くして、アルの言うことを全否定するエルザだった。
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