#43 みんなでお城に(1)
「あ、やっぱり寝たか~。大丈夫かい?」
「…ちょっと……ダメかもです」
アルを全身で支えるエルザの所に、ロイが手を貸しに来た。
アルに肩を貸すように支えてもらい、エルザが一息付いた。
「助けてくださってありがとうございます。ロイさんも…」
いいかけて、大事なことを思い出した。
――――――――――――この人、王弟殿下だった
「お、おっ王弟殿下におかれましては、この度は誠に」
「あ、覚えてた。でも、ここでは騎士団長のロイだから、前とおんなじで、お願いしたいな?」
以前のような、小首を傾げる可愛らしいオネガイも、王族からの御願いかと思うと、有無を言わせないような圧力がかかる気がする。
実はそのポーズにも、断ったら小首をへし折って秘密裏に消すぞ、とかいう意味が込められているのでは…。
「うう…怖い…。わかりました…」
「うん。何が怖いのかとても気になるけど、とにかくありがとう」
アルをソファへ座らせて、その横にエルザ、向かいにロイが腰を下ろした。
ロイがいつもより畏まった様子で、エルザに声をかける。
「とにかく、大変だったね。本当に無事で良かった」
「ご心配をお掛けしました。皆様のおかげで助かりました」
「いやいや、エルザちゃんを助けるためならなんだってするさ。お疲れのところ悪いんだけど、この件について、聞かせて欲しいんだ」
エルザはここに来てからの事を、順を追って説明した。
エルザの力を利用しようと狙っていたこと、古い人形であるデイジー達を変化させていたことも、全て話した。
服従の薬は、飲む振りをしてカップにすべて瞬間移動させたので、それも提出した。
ロイはデイジー達の保護と、フィリップが二度とエルザの前に現れないようにすることを約束した。
「アルさ、エルザちゃんの所から帰った日から、寝てなかったんだ」
クウクウと寝息をたてるアルを見て、ロイが呟いた。
そうなると、丸2日は寝ていないことになる。
そこまでして捜索してくれていたなんて、エルザはとても申し訳ない気持ちで一杯になる。
「…私を探してくれてたんですね…アルさん」
「あー、うん。まぁ、それだけじゃないんだけどね。詳しくはアルに聞いてね」
そそくさと、急に落ち着かない様子でロイが立ち上がった。
「さぁ、とりあえずみんな城にいこっか」
「え?」
突然何を言い出したのか、この王弟は。
エルザは口を半開きで、『無理』という思いを込めてロイの顔を見た。
「だって、エルザちゃんも連れてけって、言ってたし。あとそれ、離れなさそうだよ?」
ロイが指す方には、エルザの服の袖をしっかりと握りしめるアルの手が見えた。
少しひっぱってもびくともしない。実は起きているのかと確かめたが、相変わらずすうすうと寝息を立てている。
「いいよ、僕の転移術で一瞬だから、大丈夫大丈夫!」
近所だからちょっと寄ってってよ!みたいなノリで言わないで欲しい。
そういうことじゃないんだけどね、と思いながら、エルザは深くため息をつくのだった。
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