#33 バックス邸
一部抜けている箇所がありましたので、追加しています(10月2日 21:12)
天井が高い、豪奢な造りの部屋の中でエルザは目が覚めた。
おそらく自分は連れ去られたのだろう。
そのまま動かないように辺りの様子をうかがう。
自分は天蓋つきの真っ白なベッドの上に横になっている。
ドアの前にはメイドのような女性が、背の順に4人立っているが、目が覚めたと気付く様子はない。
服はシンプルで何やら肌触りのよい服に変えられていた。ナイトウェアのようだ。
ドレッサーやソファー、テーブルなどの家具は、おそらく同じ意匠のもので統一されている。
――――マギーは、どうなったのかな
◇
フィリップの姿を確認して、エルザは動くことが出来なかった。
マギーがエルザの背後から飛び出し、『排除』を作動させる。
「逃げなさい!エルザ!」
エルザが、ジリジリとフィリップから距離をとる。
フィリップは先日の狼狽を少しも感じさせず、余裕すら窺える。
『排除』のあの黒い穴が開いた……と思うと、一瞬で溶けるように消えてしまう。
「なんだ……これは」
わなわなと、茫然とした様子で呟いたマギーが、次の瞬間、くたっと脱力した。
その姿を見たエルザは動転し、マギーのそばに駆け寄る。
「マギー!!」
「エルザ……逃げ……」
くにゃっと、まるでただのぬいぐるみのように、マギーの体がだらりと弛緩する。
逃げなくては、エルザは瞬間移動を発動させるが、なぜか途中で魔法がたち消える。
そうしているうちに、エルザは意識を失った。
◇
いつの間にか、メイド服の女性がエルザの横に立っている。
気配を全く感じなかったので、エルザはビクッと体を震わせた。女性は優しく微笑み、エルザに声を掛けた。
「おはようございます、エルザ様。私はあなたのお世話を仰せつかりました、デイジーと申します」
「おはようございます、デイジーさんですね。私に敬称は必要ありません。ここはどこですか?」
「主人から貴人としてお世話をするようにと、言われております」
デイジーはにこやかな表情を崩すことなく、ゆったりとした口調で話している。しかしエルザの質問には一向に答えない。
「フィリップ様に会わせて下さい。ここは彼の家ですか?」
「主人は商談のため、こちらにはおりません。申し訳ございません。この建物は主人の別宅でございます」
デイジーはお手本のように美しいお辞儀をみせた。
それを見て、エルザは何かモヤモヤと、引っ掛かりを感じていた。原因を探るべく、彼女の顔をじっと見つめて、あることに気がついた。
にこやかな顔の表情が、先程から眉ひとつ動いていないのだ。美しいけれど、人形のような、張り付けたような顔だ。
「あなたは……人間ではないのですね」
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