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#33 バックス邸


一部抜けている箇所がありましたので、追加しています(10月2日 21:12)




天井が高い、豪奢な造りの部屋の中でエルザは目が覚めた。

おそらく自分は連れ去られたのだろう。

そのまま動かないように辺りの様子をうかがう。


自分は天蓋つきの真っ白なベッドの上に横になっている。

ドアの前にはメイドのような女性が、背の順に4人立っているが、目が覚めたと気付く様子はない。

服はシンプルで何やら肌触りのよい服に変えられていた。ナイトウェアのようだ。

ドレッサーやソファー、テーブルなどの家具は、おそらく同じ意匠のもので統一されている。



――――マギーは、どうなったのかな






フィリップの姿を確認して、エルザは動くことが出来なかった。

マギーがエルザの背後から飛び出し、『排除』を作動させる。



「逃げなさい!エルザ!」



エルザが、ジリジリとフィリップから距離をとる。

フィリップは先日の狼狽を少しも感じさせず、余裕すら窺える。


『排除』のあの黒い穴が開いた……と思うと、一瞬で溶けるように消えてしまう。



「なんだ……これは」



わなわなと、茫然とした様子で呟いたマギーが、次の瞬間、くたっと脱力した。

その姿を見たエルザは動転し、マギーのそばに駆け寄る。



「マギー!!」


「エルザ……逃げ……」



くにゃっと、まるでただのぬいぐるみのように、マギーの体がだらりと弛緩する。

逃げなくては、エルザは瞬間移動を発動させるが、なぜか途中で魔法がたち消える。


そうしているうちに、エルザは意識を失った。





いつの間にか、メイド服の女性がエルザの横に立っている。


気配を全く感じなかったので、エルザはビクッと体を震わせた。女性は優しく微笑み、エルザに声を掛けた。



「おはようございます、エルザ様。私はあなたのお世話を仰せつかりました、デイジーと申します」


「おはようございます、デイジーさんですね。私に敬称は必要ありません。ここはどこですか?」


「主人から貴人としてお世話をするようにと、言われております」



デイジーはにこやかな表情を崩すことなく、ゆったりとした口調で話している。しかしエルザの質問には一向に答えない。



「フィリップ様に会わせて下さい。ここは彼の家ですか?」


「主人は商談のため、こちらにはおりません。申し訳ございません。この建物は主人の別宅でございます」



デイジーはお手本のように美しいお辞儀をみせた。

それを見て、エルザは何かモヤモヤと、引っ掛かりを感じていた。原因を探るべく、彼女の顔をじっと見つめて、あることに気がついた。


にこやかな顔の表情が、先程から眉ひとつ動いていないのだ。美しいけれど、人形のような、張り付けたような顔だ。



「あなたは……人間ではないのですね」





御覧いただきありがとうございます


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