#24 アル(2)
エルザに頼られたかった。
すごい!と褒められたかった。
人の心配ばかり一生懸命で、自分の事はおざなりな彼女を、一番そばで見守っていたいと思った。
あぁ、我ながらなんてひねくれて、子どもっぽいんだろ、と自身に呆れてため息をつく。
もうとっくに、わかっていたことだった。
エルザが、いとおしくてたまらないのだ。
女性が苦手なんて、嘘だったかのように。
エルザに触れたいと思うことも、どうしようもなく幼い独占欲も、もちろん女性を好きになるのも、初めての感情だった。
―――心配している、君を守りたい、力になりたい
全部アルの本当の気持ちに違いないが、全てはさらけ出せないでいる。
エルザの気持ちが気になって、想いを上手く伝えられないのだ。
でもさすがに『ハグしていい?』はいかがなものかと自問するが、結果として、我ながらいいこと言ったと思っている。
力加減に気を付けて、優しく体を引き寄せた。
エルザからしたら、家族や友人に対してのハグだろう。
アルはむしろそれでよかった。もし、それ以上の熱を感じていれば、アルの箍は外れていたかもしれない。
触れてみたかったエルザが、こんなに近くに、自分の腕の中にいるのだ。
耳は小さくて、ほんのりと赤くなっている。
髪の毛はやっぱり柔らかくて、野の花と薬草の香りがする。
そういえばさっき、カゴをひっくり返していたっけ。
アワアワしたエルザを思い出して、アルはにんまりとしてしまう。こうした日常のひとつひとつが、どうしようもなく幸せに感じるのだ。
手遅れになる前にと、腕を解こうとしたその時、労るような優しい手がアルの背中に当てられた。
雷が落ちた。電流が走った。
宥めるような、優しい触れ方なのに、アルにとっては凄まじい衝撃に感じられた。
抱き返してくれることが、こんなにも嬉しいなんて思わなかった。
アルは、エルザを自分の腕の中に閉じ込めてしまいたくて、思わずきつく抱き込んでいた。
彼女が、アルに対しての労いや励ましのつもりでそうしてるのもわかっている。
でも、感情が決壊しそうになり、慌てて距離を取った。
言うに事欠いて、ありがとう、なんて。
もっとなんか気の効いた言葉はないのか、とアルは自身に文句たらたらだ。
何かあったのかと、心配そうに眉をへの字にしていたエルザを思いだし、悪いと思いつつ自然と頬が緩む。
今思えば、出会った時から彼女の優しさに甘えて、心配を掛けてばかりだ。
それでも、エルザの隣を誰かに譲る気はない。
これからは、エルザが頼れるように、甘えられるように、そばにいたい。
いつか気持ちを伝えられたら、笑ってくれるように。
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