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#11 騎士は考える



アルはこのところ、自分がやたら浮かれているように感じていた。


先日、エルザの店で酒をのみ、クダを巻いて愚痴を吐き、あげくの果てに酔いつぶれて寝る、という大失態をおかしてしまった。

そもそも自分は酒に強いと思っていたのにあの体たらく。

寝こけて記憶をなくすなどはじめてのことで、それについてもおおいに反省し、エルザにも平謝りだった。


だがアルは、あれから自身の気持ちが楽になっていることに気がついた。

迫り来るご令嬢に何もできずに、あんなにも落ち込んでいたのに、だ。

酒に任せて吐き出したからだろうか?ふっきれたのか?などと考えるが理由はわからない。

ただ、何か嬉しい事があった時のような高揚感を強く感じていた。



――――何だろう……胸が高鳴るというか…幸福感がすごい



あの日、夢見が良かったのか、眼が覚めた時も幸せな気持ちでいっぱいだった。

あまりにも幸せすぎて、様子を見に来たエルザを抱き締めたい衝動に駈られてしまうほど、よい気分だった。


だだそれは、自分の醜態を聞くまでの話だが。


迷惑を掛けたと狼狽え謝罪を繰り返すアルに、『いろいろあったから、スッキリしてよかった』と、エルザはニコニコ笑っていた。

やらかした自分が言えたことではないが、異性の酔っぱらいを部屋に置いとくなんて、もう少し警戒して欲しい、とアルは思う。



「アル」



…エルザは人が善すぎるから。もし悪意を持った奴がそれを隠して、困った顔で近づいてきたら…?

うわ、ヤバい、思いのほかヤバい。

想像しただけで3回はソイツを再起不能にしてる。



「アルって」



もう少し防犯面を強化すべきだ。

変なやつも来るって言ってたし……。

そういえば師匠が排除とかいってたけど…師匠にそんな荒っぽい事出来ないだろうし…。



「………」



エルザだって、『大丈夫ですよ!』なんて言ってるけど、お人好しで、世話好きで、自分のことなんていっつも二の次じゃないか。

心配だ。あんなに無防備なんだから、やっぱり俺が防犯強化計画をたてよう。うん、それがいい。



「…アル、そいつ死んじゃうから、」


「……ん?」



ロイに肩をポン、と叩かれて我にかえる。

アルの手には白目を剥いた窃盗犯。

いつの間にか拘束の手を強めてしまったようで、完全に気絶していた。



「おお…あれ?」


「…いやまぁ、いいんだけどさ……」



ロイは不思議そうにしているアルを見て、苦笑いを浮かべた。




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