18.虚勢いけいけ?講和?暗殺依頼?
さて、オロシアとの講和、忍が交渉役だって?どうなることやら。
18.虚勢いけいけ?講和?暗殺依頼?
1875年11月19日12時00分、霞が関外務省。外務卿寺島宗則伯爵と私南田忍大日本帝国内閣府相談役外交権委任者は、オロシア軍事大臣ドミトリー・ミリューチン伯爵とキリル・シュトルーベ代理公使との講和交渉に応じていた。
「そちらの条件は理解できたわ。委任統治で構わないわ。対外的に秘密にしたいってことね。秘密協定にして折を見て握り潰すこともできるようにしたのだから、その代わり、秘密の有効期限は20年、レナ川オリュークマ川リカ・ニュクジャ川以東をその範囲にして下さらないかしら。皇帝もアラスカを売り払ったように、北の不毛な土地ですもの構わないと思いましてよ。」
いけいけである。落としどころの探り合いだ。
「広すぎではと考える。」
「あら、東清鉄道もイルクーツクもヤクーツクも攻略目前ですわ。協議をやめても良いですわよ。別に割譲ではないのだし、そちらにとっては悪い話ではないのではなくて。」
内情は攻勢限界点である。虚勢を張り続ける。
「わ、判った。対象地のわが国民扱いはどうするつもりじゃ。」
「日本国民と同じように待遇するわ。委任統治地を離れたいと希望する者はこれを妨げないわ。これでどうかしら。」
「それでいいわ。あと、関税自主権回復と治外法権の撤廃も入れて下さいね。それから、これは要求じゃなくで、お節介だけど、皇帝とそのご子息、その国のためになると思うから渡すわ。アレクサンドル3世を暗殺する人物や帝政オロシアを終わらせる人物が書かれているわ。」
メモには以下が書いてあった。
"A)1881年3月13日アレクサンドル2世がサンクトペテルブルク市内でシュラフタの家柄で「人民の意志」党員のポーランド人イグナツィ・フリニェヴィエツキが放ったキバリチチ式手投げ爆弾)により暗殺。首謀者はアンドレイ・ジェリャーボフ、ソフィア・ペロフスカヤ。
B)1917年3月15日帝政オロシアが終結する。
C)1918年7月17日未明エカテリンブルクのイパチェフ館においてニコライ皇帝ら銃殺。ロマノフ家滅亡。
直接の原因は
①皇帝出征のため後を託されたアレクサンドラ皇后とラスプーチンの失政
②改善しない戦況と物資不足に苦しんだ民衆の蜂起
③連動して起こった3月8日の首都ペトログラード暴動
④上記暴動によるドゥーマの皇帝退位要求。
対策は
①1874年にシンビルスク郡の公立学校総監となったイリヤ・ニコラエヴィチ・ウリヤノフとその家族の抹殺
(長男アレクサンドルがアレクサンドル3世を暗殺、次男レーニンが民衆を帝政打倒を扇動、他兄弟も同じ)
③1863年ニコライ・チェルヌイシェフスキーが著した革命小説『何をなすべきか?』を禁書
④カザンのニコライ・フェドセーエフの主催する革命サークルを解散させ、そのメンバーを抹殺
⑤サマーラのアレクセイ・スクリアレンコによる社会主義議論サークルを解散させ、そのメンバーを抹殺
⑥サンクトペテルブルクのマルクス主義革命結社 「社会民主党」を解散させ、そのメンバーを抹殺
⑦サンクトペテルブルクの全てのマルクス主義労働者グループを解散させ、そのメンバーを抹殺
⑧ボリシェビキ幹部となるレフ カーメネフ、グリゴリー ジノヴィエフ、レフ トロツキー、エヌキーゼ、カリーニン、ブハーリン、トムスキー、ラシェヴィチ、プレオブラジェンスキー、セレブリャコフ、ルイコフを抹殺"
「これは、一体、すでに立ち上がっている組織なのか。いた、今はまだない組織か。どうして先のことが分る。」
「あら、我が国の最高機密ですわ。先読みという能力ですの。お互いの秘密を共有すれば仲良くなれると思っての配慮ですわ。皇帝によろしくお伝えくださいね。アレクサンドルはアレクサンドル3世の暗殺を目論む革命的結社に参加して実行役となるわ。あと、10年後位かしら。」
「これほど、詳しくて具体的だとは。マクベスの魔女ですかな。」
「こちらでは神の使い、巫女と呼ばれています。」
始めて、外務卿寺島宗則伯爵がたどたどしいオロシア語で話した。オロシア語猛特訓の成果がありましたね。
「ますます、貴国には手が出せませんな。大筋合意とのことで書面化摺り合わせ作業、よろしくお願いします。」
「講和の折には皇太子を国賓としてご招待いたしますわ。我が国偵察の良い機会になると思いますわ。ほほほ。」
キリル・シュトルーベ代理公使は、結局何も話さなかったわね。私のこと怖いのかしら。
ドミトリーは思った。・・帝政が変わって約束が反故にされることを恐れているのか・・
すごいですね、忍。あっぱれ。次回は、講和式典の場面です。これで第1部終了の予定です。




