14.私がはちみつ?肉の方がいいと思うんですけど?
オロシアとの交渉ミッションです。忍、頑張れ。
14.私がはちみつ?肉の方がいいと思うんですけど?
1874年9月15日10時00分、オロシア公使館。私南田忍は横浜の海岸通りのオロシア政府代表部にいる。
「ズドラーストヴィチェ!キリル・シュトルーベ 」こんにちは。キリル・シュトルーベ代理公使
なんで私が!私はロシア公使に挨拶する。
ロシア語ができるからって、交渉担当になってしまうのよ。
「スコーリカ ヴァム リェット?」 あなた何歳ですか。
何て失礼な!第一印象最悪!
「ムニェー トリッツァッチ ピャーチ リェット」35歳ですわ。
「モーラダ ヴィグリャヂチェ」若く見えますね。
「スパシーバ」
とお礼を言っておいた。腹立つけど。
「ヴィ イズ カコーヴァ ゴーラダ?」 出身は?
「ヤー イズ ゴーラダ ヒタチ」常陸です。
「ヒタチ?」
「本日の用向きをお話ししたいのですが。」
「ああ!失礼。かわいいのでつい。申し訳ありません。」
「私は、大日本帝国内閣府相談役外交権委任者の南田忍です。本日は樺太のロシア軍4万の上陸について、抗議に参りました。こちらが書簡です。皇帝へお渡しください。」
「お預かりします。お渡しいたしましょう。では、こちらがお帰り先です。」
「全滅させましたが、悪しからず。ちょっかいを出すと弱くとも必死なミツバチに刺されましてよ。お気を付け下さいませ。書簡には、講和条件が書いてありますわ。はちみつより肥えた豚のほうがよろしくてよ。ダストレーチ。」
「な!・・・・・肥えた豚?中国?」
キリル・シュトルーベは慌てて書簡を読むのだった。
1875年11月15日10時00分、オロシア公使館。私南田忍は横浜の海岸通りのオロシア政府代表部にいる。
「ロシア皇帝からの返事が来た。こちらだ。ロシア皇帝ははちみつも好きだそうだ。」
キリル・シュトルーベ代理公使は、南田に話しかける。
「お勧めはしませんと申し上げましたが。」
「ロシア皇帝は軍艦を差し向けるとのことだ。悪いことは言わん。講和条件のロシア領割譲は取り下げたまえ。原状復帰で悪い話ではないであろう。」
「そちらから仕掛けておいて、片腹痛いですわ。密蜂は襲われなければ刺しませんよ。艦隊では占領までできませんでしょうに。」
「追加8万派兵するので、ご心配無償。」
「恫喝ですか。それで、宣戦布告はなされないので?」
「強情な。小国相手に宣戦布告なぞ意味ないです。しかし、なんで講和条件が樺太の日本帰属とロシア国内領土の割譲なのじゃ。」
「今後、樺太を攻めることがないようにするためです。樺太の安全の確保ですわ。」
「樺太は雑居地ということで両国同意していたと思っていたが。」
「雑居地はそちらが強引に押し通したこと。こちらは約束を守ってきました。それなのに、そちらは何で雑居地に兵を進めたのですか。」
「樺太で妙な動きがあるからだ。ロシア人が土地を追われているそうじゃないか。」
「雑居地の民の縄張り争いはお互い様でしょう。明治政府は扇動していませんわ。これを理由に、我々の土地に後から入ってきて、アイグン条約や北京条約のように掠め取る事態だけは、決して容認できませんわ。そちらが雑居地に兵を進めた以上、守ることは我々の当然の権利。無理やり雑居地にさせられた経緯もオロシア4万進軍の暴挙も今回で清算します。」
「話になりませんな。一人の女の癇癪で国がつぶれるとは残念だ。もっと賢いと思っていたが。買いかぶりか。」
「いいでしょう。喧嘩を買ってやります。大日本帝国はロシア帝国に宣戦布告します。以後、国交断絶です。」
「な、なに!帝の裁可が必要でしょうに。」
「あら、喧嘩売って、買うと、慌てられるのですね。ひょっとして、ロシア皇帝のお言葉は捏造かしら。こんどは呼びつけますからあなたが皇居に来なさい。では、失礼。」
バタン!扉が閉まる。
「っく!なんてことだ。望まぬ方向になぜ進む。あの、強気、どこから来る。日本を侮れん。」キリル・シュトルーベは思わぬ展開にあっけにとられるのであった。恫喝して、穏便にことを収めろと言われていたキリル・シュトルーベは進退窮まった。ありのままに報告するしかないか。と思うのであった。
結構やりますね、忍ぶって。次回は、資源危機とオロシア太平洋艦隊、バルチック艦隊の巻きです。




