1.これは終わりか?始まりか?
すでに人類は半分が死滅し人類滅亡寸前の第3次世界大戦中の日本の核シェルターが、明治に転移します。転移先で主人公南田忍がわずかに残った資機材と知力と策略で、コミュニティーを守って核戦争のない世界をめざし始めます。生命の危機、コミュニティ存続の危機、ロストテクノロジーの危機、明治政府との戦い、列強との戦いなど数々の危機の中で、少数の21世紀人が19世紀の人々を導いていけるのか。飲み込まれるのか。この苦難の日々の物語。
1.これは終わりか?始まりか?
2054年2月6日04時、FEMA指令室。いよいよ最後か。私は目をつぶる。振動と暗闇の中で絶望を感じながら。
停電はしばらくして復帰した。再起動の電子音が響く。
「副指令、シャルター区画Cは無被害、あと約1分でシステム復帰見込み。」
私は南田忍、35才、危機管理局副長で副指令と呼ばれている。
"国家非常時指揮システム(NIMS),首都圏第2シェルターシステム管理チーフ細川瞳(25)からの報告だ。"
生きているか。生きられるか。私は目を開けて、薄暗がりの中、システムが立ち上がっていくモニターを見る。
「EMP爆弾か、分厚い鉛の中の非常用電源までやられるとはな」
静寂の中、システム起動の電子音が響き渡る。そして
「パワーユニット始動復帰済、生命維持装置稼働確認、監視システム起動機能現在有効54%。多機関調整システム起動、防衛ミサイル機能近接のみ復帰しました。・・・茨城沖イージスシステム確認できました。・・・衛星通信機能しません。シャルター全システム起動確認。現時点で、被害レベルシェルター内A、シェルター外B、詳細がリストアップ中ですが、緊急対応対応が必要な区画を4区画確認。地上B1ブロック、接続ブロックR1・・」
高い細川の早口の声が響き渡る。
私は南田忍、35才、危機管理局支部長(FEMA)で指令と呼ばれている。
"国家非常時指揮システムNIMSは2025年から導入された非常時指揮システム(ICS)に多機関調整システムと広報システムと防衛システムを加えた三つのシステムから構成される、総合的なものである。"
「本部と連絡とれないねぇ、きっと首都壊滅的被害だよ。非常事態C1に該当しちゃうかもね。」
緊急事態管理研究所講師兼指導役だがどか不真面目な雰囲気の近藤勇(55)が状況を総括した。
「只今を持って非常事態C1発令。統合調整権をここに置く。規定通り速やかに対処せよ。通信可能エリア外に情報収集用のドローンおよび偵察機を発進、状況を探索せよ。」
これから忙しくなる。私は間を置かず指揮を行うが、声がかすれた。滋養強壮ドリンクの入ったペットボトルをのむ。
覚悟はしていた、すでに世界の半数が壊滅している。中露の飽和先制核攻撃だが、今回は第3波になる。くるっているとしかいいようがない。予兆は3日前の電子・衛星攻撃。核1波は相互にミサイル防衛システム(MD)によりほぼ相殺されたが、続く第2派で西側の防衛システムが崩壊し、被害多数で東京生き残った。敵の残存攻撃能力はほぼないと思われるが、今回は残存システムの破壊が目的で、この後第3波核攻撃も考えられないわけではない。
"FEMAには2054年9月6日時点で7,603 人の職員がおり、常勤職員約3,700 名のほかに約4,000 名の臨時職員がいる。このシェルターはサブ組織で、全職員の3割がいて、私は若くしてそのトップである。臨時職員は災害時や戦争時にその専門能力に応じて緊急時活動に従事する。具体的には、被害家屋・施設の調査、電話の応対、議会・マスコミ・地域住民への対応、人事・賃金・物資の供給・輸送・通信などの管理業務、コンピュータネットワークの構築と運営、データ入力と記録などであり、“地方自治政府が機能麻痺した時点での強力な助っ人”としての機能も発揮する。"
私は国家安全保障会議(NSC)副議長の副総理大臣鬼塚英雄(45)と緊急事態管理庁(FEMA)副長官神田光福(50)に緊急報告を行うため、非常用回線をONにした。待っている間、現況情報をメールにまとめ配信した。
1分ほどで両2名とつながった。上着を着て整えながら、ゆったりとした口調で画面を見下ろしながら鬼塚がいった。
「状況は?」
「首都壊滅の模様。非常事態C1発令。この支部は本部機能を代行します。」
「なんと」
「鬼塚様は国家安全保障会議(NSC)議長となり、臨時総理大臣となります。神田様は緊急事態管理庁(FEMA)長官となります。速やかにご対応をお願いします。」
「いよいよ大事になったな」
「NIMSシステムは外部通信を除き復旧しています。このシェルター対象地域では連絡可能です。外の様子は調査中です。」
「まずは状況を確認しつつ、方針の決定だな。しかし、脅威が判明した策源地には即無力化の対処方針は今までとかわらん。探索ぬかるなよ。はぁ。」
「は!」
鬼塚と南田とのやり取りを、無表情に聞いていた神田は、指示を出す。
「外の全てと情報が取れないのは、おかしい。今ある手持ちのアナログもデジタルも何もかも動員して、外界情報の確認が、シェルター内処理に優先する。頼んだぞ。」
「派手に動くと、こちらが生存していることが知られますが、よろしいので。」
「何を寝ぼけたこと言ってるんだ。敵の電波すらないのだ。防衛手段も残っている。心配には及ばん。優先度Aで全力で当たれ。こちらは、新体制の下、非常事態C1を公告し、緊急記者会見を行う。」
流石判断が早い。冷たく言い返される南田であった。
第1部 試練編、第2部 殖産編、第3部 再興編、第4部 挑戦編を考えてます。長編危機活劇を目指します。期待には答えられないこともあるとは思いますが、読んで面白いと思っていただけたら、頑張ります。