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無能な青年と無情の姫 その5

 やっと、やっとこの時が来た。


 少女は緊張を解きほぐすために、長い時間をかけて深呼吸をした。


 刀預神社の幣殿へいでんにある一室。長い間使用されておらず、物置となっていた部屋に隠れ潜みながら、彼女は邪悪な笑みを浮かべていた。


 やっと、あいつを殺すことができる。


 必要な準備は全てやった。あいつを誘い出す手紙はちゃんと届いている。仕掛けた罠は何度も練習して、完全にものにした。一撃で仕留められれば良し。仕留められなくても、とっておきの隠し球があるから大丈夫、


 重要なのは、罠を発動させる頃合いだ。


 再び緊張が身体と精神を蝕む。もし失敗したら、と悪い想像が頭を駆け巡る。


 少女は思わず、首から下げている勾玉を握りしめた。


「かあさま……」


 手のひらに収まっている勾玉は彼女にとっては命より大事な、母親の形見だった。一人ぼっちで寂しい時、お腹がすいて動けなくなった時。この玉を握れば、辛いことはなんだって耐えられた。母親がそばで見守ってくれている気がした。


「大丈夫……やれる」


 勾玉を握り終え、今度は罠の発動装置を手に取る。その目には固い決意が浮かんでいた。


 この2ヶ月、この日のために準備をしてきたのだ。


 そこへ、部屋の中まで届く大声がした。


「ッ、貴様!」


 声の主はひどく機嫌が悪そうだ。何かあったのかと、居場所がバレないように少しだけ扉を開ける。事務所の前で八咫烏たちが見知らぬ男性たちに抜刀しようとしていた。


 なんてことだ。このタイミングで客が来るとは、完全に予定外だ。いや、落ち着け。この程度の不確定要素なら、作戦

に支障は出ないはず。


「っ━━━!」


 心を鎮めるより先に、待ちに待った瞬間がやってきて舞い上がった。


 あいつが、きた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] スリルがあって楽しいです。 [気になる点] 一瞬読み飛ばしをしてしまった? と思ったのですが、最後まで読むと主眼が王女様に変わっていたのですね。 [一言] 燈様が何を仕留めたいのか楽しみで…
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