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まだ終わりじゃない

 皇王国の建国について記した『王国記』に曰く。


 天修羅を倒した伝説の英雄、初代王の剣の強さはこう記述されている。


「その神速の動きは何者も捉えることはできず、その強力な斬撃はあらゆる敵を両断した」


 宗次郎がいた現代において、これは誇張表現であろうと解釈されている。


 初代王の剣の属性はわかっていない。基本五大属性はもちろん、歴史上どんなに珍しい属性を持ってしても、あらゆる神速の動きと全てを両断する斬撃を両立することはできなかったからだ。


 しかし、その表現は誇張などされていなかった。


 宗次郎が放った黄金の閃光は綺麗な弧を描き。


 迫り来る二十数体の妖を文字通り一刀両断した。


 ただ一体を除いて。


『これほどとはっ!』


 鳥人型の妖のみ、宗次郎の攻撃の直前に翼を広げていた。致命傷をなんとか回避したが、足首から下がなくなり、流れ出た血が大地を染めている。


『貴様、一体何者だ!?』


「英雄だよ」


『何!?』


 宗次郎は大きく息を吸った。


「お前たちは俺が滅ぼす。覚悟しろ」


『っ!』


 妖が翼をはためかせて後退する。


「ふっ!」


 宗次郎は再び空断ちを放つ。


 黄金の光が真っ直ぐ妖に向かっていくが、何も斬り裂くことはなかった。


「くそっ」


 追撃をかけたいところだが、空中にいる相手への攻撃手段は限られている。


 逡巡しているうち、射程外まで逃げられてしまった。


 ━━━いや、今はそれよりも。


 宗次郎は丘を見てから、背後に横たわる剣城を見る。


 本音を言えば、剣城の死体をここに放置しておきたくはない。きちんと弔っておきたい。


 けれど、自分の死体を運ぶくらいなら早く王の元へいけと剣城なら言うだろう。


「……ありがとうございました」


 震える声をなんとか出し切って、宗次郎は進む。


「っ!」


 元来た道を宗次郎は走る。急がなければならい。


 それ以上に、ゆっくりしていてはいつまでもこの場から動けなくなりそうだったから。


 ━━━さよなら。


 離別の言葉を胸の中で呟き、宗次郎は顔を上げる。


 時は一刻を争う。


 大地と別れてから一時間は経っていた。





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