表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/282

真実と真意と その3

 次の日。


 日が昇ると同時に宗次郎は目を覚ました。檻の中で寝たせいで体の節々が痛い。なのにろくに伸ばす事もままならず、宗次郎は苦い顔をする。


「起きたか」


 やる事もないので座禅を組んでいると、剣城がやってきた。昨夜と違い仏頂面で、何を考えているのかまるで読めない。


「ついて来い」


 牢屋の鍵を外され、宗次郎は外へ出る。


「ん〜〜〜」


 まずは伸びをして身体をほぐす。バキバキと関節が鳴る音が響いた。


「早くせんか」


 剣城に急かされ、宗次郎はテントの裏口から中に入った。


 中は薄暗く、また人気もない。昨日ここで喧嘩をしたのが嘘のように静寂だった。


「ここだ。ここにいろ」


 廊下を進んでしばらく、剣城が指示したのは隙間の様な空間だった。


 首を突っ込んでみると中は薄暗い。一か所だけ明かりが差し込んでいた。そのまま全身を入れると、窮屈さで文字通り身が縮んだ。


「お前に二つ命じる。私が指示を出すまでここを出るな。そして、物音を立てるな。わかったな?」


 まるで戦闘中の気迫だ。剣城の発言に宗次郎は無言で頷いた。


 すぐに剣城は布で宗次郎を覆い隠した。冬の気配が忍び寄る秋とはいえ、ほぼ密閉空間にいる。宗次郎の額にはすぐに汗が浮かんだ。


 ━━━一体なんだってんだ?


 昨夜に大地のことをもっと知ってもらうと言っていた。それが、この密閉空間にいる理由なのだろうか。


 手持ち無沙汰な宗次郎は明かりが差し込む隙間を覗き込む。


 ━━━?


 広い空間だった。おそらく大地の玉座が置かれていた部屋だろう。が、今は粗末な椅子が六つ、向かい合う様に並んでいるだけだった。


 宗次郎が疑問に思っていると、シャッと布が開く音がして三人分の足音がする。


「殿下。お気をつけを」


「わかっている」


 相変わらず不機嫌そうな大地、いつもよりしっかりした格好の爺、仏頂面の剣城が入ってきてきた。


「?」


 ━━━やべ!


 大地と目が合いそうになり、宗次郎は慌てて頭を下げる。


 やがてギシ、と椅子に腰掛ける音が聞こえた。宗次郎はゆっくり視線を戻す。


 大地と剣城は背中を向けて座っている。宗次郎はほっと一息ついて、気配を消す努力を務めた。


「はぁ」


「陛下」


「うるさい。わかっている」


 大地がため息をつくと、爺がすかさず声をかける。どことなく雰囲気が重い。嫌な緊張感が漂っていた。


「では、迎えて参ります」


 少しして、立っていた爺が再び幕の向こうへと姿を消した。歩きながら、宗次郎に視線を向けている。


 見ていろ、と言われた気がして宗次郎も頷いた。


 椅子が六つあり、爺が迎えにいくと行ったところから、誰か客が来ているのだろう。


 問題は、それが誰かということだ。


 天幕の向こうに人影が四つ見える。


 いよいよだ、と宗次郎が身構えると、


「こちらへ」


 爺に案内されて三人の男が入ってきた。


「大地陛下、お目に描かれて光栄です」


「内田どの、遠路はるばるよくお越しくださった」


 最初に頭を下げたのは恰幅の良い男だった。白髪が混じった頭髪に蓄えられた髭、格好から見てもそれなりの地位にいるのだろう。


 そんな男性が大地のような少年に頭を下げている。なんとも奇妙な光景だった。


「大地陛下、お久しぶりでございます」


「大賀どのも。壮健で何より」


 次に頭を下げたのは細身の男だった。どこかや連れていて覇気がない。目の下にも隈がある。


 もう一人は唯一帯刀しており、大地に対して軽く頭を下げただけ。大地も特に何も言わない。服装は一番地味だが、戦士としての実力は三人の中で最も高い。


 ━━━頭とその副官、そして護衛役ってところかな。


 そう見切りをつけたところで、宗次郎はあることに気づく。


 三人の胸に、玄武の刺繍がある。


 ━━━この人たちは、信斐の人間か。


 角根砦に掲げられていた旗と全く同じ。大地たち尾州の同盟国の人たちだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ