戦いが終わって その2
夜空に星が瞬くなか、宗次郎はテントを出る。
喧噪から遠ざけるよう気を利かせてくれたのか、宗次郎がいたテントの周りは原っぱだった。そこから衛兵についていきつつ、テントが密集している場所を目指す。
すると、
「うわあああああああああああああ!」
目指す先からひときわ大きな男の悲鳴が聞こえてきて、宗次郎の身体はびくりと反応する。
「……おい」
「陛下をお待たせするわけにはいきません」
抗議する三木谷にも振り向かず、衛兵はぐんぐん進んでいく。
やがて、開けた場所に出た。
そこには、
「ああああ、六郎は!? 六郎はどこだ!?」
「夫は? 夫はどこに?」
「せがれーっ!」
上がる悲鳴。並ぶ袋。泣き崩れる人々。
悲惨というほかない光景に宗次郎は唇をかむ。
目をそらしたいのにそらせない光景が飛び込んでくる。耳をふさぎたくてもふさげない音が入り込んでくる。
現実がそこにあった。
「おい、少年」
「!」
三木谷に肩をつかまれてはっとする。
「しっかりしろ。とっとと行くぞ」
顔をしかめる三木谷の後をついていく。
「あ、あの……」
すぐそばで年配の女性がおずおずと波動師に話しかけているのが聞こえた。
「孫は……孫はどこに……? 戦いに行った孫が見当たらないんです……」
「……」
波動師はうつむいてから、人かくるまれている袋のほうへ案内せず、落ちていた波動刀を手に取った。
「これが、あいつの遺品です。死体は……回収できませんでした」
「あ、ああ……」
嗚咽とトサリ、と膝をつく音が響く。
宗次郎は唇をかみしめながら、その場をあとにした。




