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何のマネだ?

 深夜零時を過ぎたとある建物。本来、暗黒と静寂だけがあるはずのそこに、金色の閃光が走った。


 二回。三回。鋭く、まっすぐな軌跡には思わずため息が出そうになる。


 だが向けられている側にとっては死活問題だ。文字通り、その閃光が体にあたれば死ぬのだから。


「ぜっ、はっ」


 雲に隠れていた満月が姿を表し、建物の窓ガラスを照らす。


 無人のはずの廊下には波動刀を構えた男が二人。壁際に追い詰められている白衣の男は息が荒く、表情も切羽詰まっている。


 対して廊下にいる男は疲れが見えるものの、呼吸は正常で表情も真剣そのもの。


「くそがぁ!」


 追い詰められた男はやぶれかぶれに波動刀を振り上げる。


 炎の波動を示す赤色に染まったそれは、死神の鎌。当たれば死ぬ一撃。にも関わらず向けられた男は冷静だ。


「ふっ!」


 廊下にいる男が波動刀で迎撃に出る。波動の属性が示す黄金色が刀の軌跡に合わせて煌めく。


 ぶつかる波動刀。響く金属音。広がる衝撃。


 そして、


「あああああっ!」


 黄金の光が加速し、赤き光を纏った波動刀を押し斬った。


「なっ!」


「らぁっ!」


 驚く男に肘鉄を叩き込む。追い込まれていた男は悶絶し、廊下に倒れ込んだ。


「はぁっ、はぁっ……」


 黄金の光を纏った波動刀をしまった男、宗次郎は膝をついた。


 しらみつぶしに訓練区画を走り回り、侵入した天主極楽教の信徒を見つけては戦って倒してきた。


 今倒したので、合計九人。途中、戦闘中に建物に逃げ込んだため、宗次郎も追いかけてきたのだ。


「まだだ。まだっ」


 自分に喝を入れて立ち上がる。


 情報が錯綜している。何人が訓練区画に入り込んだかもわからない以上、今は走り回って敵を見つけ次第、倒していくしかない。


 そして、それ以上に探さなければいけない人間がいた。


「よしっ!」


 窓ガラスを開け、外に出ようとする。


 そこで、


「あ」


 見つけた。


 深夜にのんびりと歩く人影。間違いない。


「先生!」


 宗次郎は大声を上げて人影を追った。


「先生、俺です!」


「む、宗次郎か?」


 振り向いた人影が月明かりに照らされて浮かび上がる。


「正武家先生、探しましたよ」


「お前、待機していなかったのか?」


 疲労を全く見せない正武家は以外そうに宗次郎を見つめた。


「命令違反だとわかってますが、じっとしてはいられませんでした」


「まったく、しょうがないやつだな。しかも一人でか?」


「ご心配なく。九人倒してますから」


「さすが天斬剣の持ち主、だな」


 正武家はやれやれと首を振って、宗次郎に背を向けた。


「先生は何を? 教師は全員外壁側で迎撃しているはずでは?」


「あぁ。もう外壁からの侵入者はない。よって転身し、生徒の援護も兼ねて挟み撃ちにする予定だ。私はまだ残っている信徒がいないかを確認していた、が━━━」


 正武家は顎に手を当てて考え始めた。


「宗次郎があらかた倒したのなら、我々も加勢に向かうか?」


「もしくは、万が一信徒が逃げないように外壁側で待機するというてもありますね。追加で戦力が来る可能性もありますし」


「……なるほどな」


 正武家はうんうんと頷いて踵を返し宗次郎の背後に立った。


「よし、私は外壁側へ向かう。宗次郎は加勢に回ってくれ。君が行けば早々逃げられないだろう」


「……わかりました」


 宗次郎の承諾に頷いた正武家は再び歩き出そうとした。


 だが、


「━━━何のマネだ?」


 あろうことか。


 宗次郎は腰から天斬剣を抜いたかと思えば、正武家に向けてきた。



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