表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/282

一件落着?


「フゥ」


「大丈夫?」


 ため息とともに座り込んだ舞友のもとへシオンが駆け寄る。


「平気。腕と左足がしびれてるだけよ」


「もー、舞友っち無茶しすぎ」


 まったくといいながら落ちたシオンは波動杖を拾った。


「でも、私の言ったとおりだったでしょ?」


 里奈は負けず嫌いで、舞友以上に完璧主義。だから、本当の家族から受け継いだ精神感応で舞友を倒せないとなると悔しいと思う。思ってしまう。


 そこを挑発すれば、絶対に精神感応でとどめを刺しにくると里奈は踏んだ。空き教室の時みたいに接近して、素手で触れてくる。それなら波動杖をもつ私が間合いで勝てる。そう作戦を説明して、舞友とシオンはこの場にやってきた。


「そーね。つか、マジで活強使えんのね。やるじゃん」


「そうでもないわよ。反射神経しか強化できなかったから」


 舞友は気を失った里奈に視線を落とす。


 入学当初は今以上に活強が苦手だった。波動を身体に浸透させ、操る感覚をどうしてもつかめなかったのだ。


 あまりにも不出来だったため、

「術士だから出来なくていい」

 と教師からいわれたが、何とかしたいと思っていた。そんな舞友に、里奈は根気強く付き合ってくれた。


 筋力の強化はできないが、反射神経が強化できるようになったのは、大切な友人がいてくれたからだ。


「よし、終わりっと」


 里奈を拘束し終えたシオンもその場にへたりこんだ。


「どうする? このあと手伝いに行く?」


「侵入者の件?」


「そ」


 短く答えて、シオンは端末を開いた。


「あ、情報来てる。訓練区画の外部から来たんだって。マジで来たのね。人数は不明だって。区画同士を繋ぐ門が爆破されたらしいけど、訓練区画で卒業試験を受けていた生徒たちが奮戦しているみたい」


「え!? 生徒が戦ってるの?」


「そーみたい」


「そーみたいって……」


 あっけらかんとしているシオンに舞友は戦慄する。


 卒業試験を受けていた生徒、つまり角掛会長や門之園会計、宗次郎たちは今、戦っているのだ。


 命をかけて。


 舞友はシオンがこれまでくぐり抜けてきた修羅場を想像することしかできなかった。


「それで、戦況は?」


「続報がないからわかんない。絶賛戦闘中ってところかな」


 シオンは両手を後ろについて上半身をリラックスさせた。


「手伝いに行く? 一応、学舎区画にいる生徒は外に出るなって指示が出てるみたいだけど」


「……今すぐはやめましょ。里奈から目を離して逃げられたら目も当てられないし。それに━━━」


 舞友は大きくため息をついた。


「ちょっと疲れたから、休憩」


「あはは、だよねー」


 シオンは同意するように両手を広げて、ゴロンと寝転がった。


 まだ生徒会の仲間が、自分の兄が命懸けで戦っている。


 そんな状況で休んで良いのかという思いはあるが、命がかかっているからこそ、疲弊した状況で参戦したくはない。


「副会長を捕らえたんだからね。長引くようなら手伝いに行こ」


「賛成」


 舞友が力無く笑うと、シオンが起き上がる。


「ありがとね。舞友っちの援護、最高だった」


「お礼を言うのはこっちよ。二回も助けられてるんだから」


「二回?」


「兄さんについて。声をかけてくれなかったら、術式を解けなかったし」


「……そ、ならよかった」


 シオンはほっとしたのか、舞友にすり寄ってきた。


「宗次郎とはなんとかなりそう?」


「さぁ?」


 舞友は力無く笑ってから、こう告げた。


「ただ、もう逃げるのはやめにする」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ