第0章0話[序章]
観客が誰もいない闘技場で1人のプレイヤーと対峙する。
「俺の挑戦を受けてくれたことは評価するが…お嬢ちゃん、召喚士なんてゴミみたいなジョブじゃあ俺には勝てない!」
「本当にそう思うか?」
「へっ!断言できる!召喚士が出す雑魚の召喚獣ごときがに、この俺『血濡れの大斧使い』のギールに勝てるわけがない!」
「雑魚か…」
PvPの対戦相手である20代の体格の良い、大斧を担いだプレイヤーが余裕そうに笑みを浮かべて言う。
「フッ…それなら良いものを見せてやるぜ!」
「あぁ?」
メニューを開き『合成』する【者】と【物】を選択する。
「これが【New Equip Adventure World】で俺しか持っていない唯一無二のジョブ!『格闘家の装備一式』と召喚獣『スピカ』を合成する!」
「合成だと…?」
俺の目の前に『格闘家の軽装備一式』とウサギの召喚獣『スピカ』が発光しながら空中に浮かぶ。
「な、なんだ?!何をする気だ?」
「『合成!』」
格闘家の装備とスピカが勢いよくぶつかり閃光を放つ。
光が収まっていくと宙に浮く、ピンク色のウサギのシルエットが至る所に入っているチャイナ服、ピンク色のウサ耳のカチューシャ、白いウサギの形をしたグローブが現れる。
「ギャハハハハ!!それがお嬢ちゃんのジョブのスキルか?!そんなくだらないモノを生み出してどうするんだ?」
「こうするんだよ!『装備!』」
宙に浮くピンク色の装備に飛び込み装備する。
「装備完了!『伝説の装備 ピョンピョンファイター』だ!」
「ギャハハハッハ!!可愛くなったが、それでどうやって俺に勝つんだ?ほら見ててやるから何かやってみろよ?!」
「ああ、よく見とけよ…スキル『超加速!』」
「はえ?」
ギースの目の前に一瞬で移動する。
「ちゃんと見えたか?見えなかったんなら、次のスキルをよ〜く見ておくんだな」
「こ、このガキ!!」
ギースは慌てて目の前にいる俺に斧を振り下ろそうとする。
「遅い!『ウサギの突進!」
「ガハッ!!」
ギースのお腹に拳が直撃しヨロヨロと後退する。
「こ、こんな馬鹿な…こんなガキに!俺がっ!!」
「無理無理!あなたじゃマリーには絶対に勝てないよ!今のマリーのAGI(素早さ)は3500もあるんだから!」
俺の服から出てきた小さな妖精が自慢気に指摘する。
「妖精?!妖精を連れた召喚士の銀髪の幼女…まさか!お前は『妖精の召喚士』か?!!」
「…違うな」
俺に指を指しているギースにゆっくりと近付く。
「装備一式奥義…」
「このガ…」
「『巨大ウサギの突進!!』」
攻撃しようとしたギースは殴られて吹き飛んでいく。
闘技場の壁に激突したギースは為す術もなく『パリーン!』とガラスのように粉々に砕け散る。
「『妖精の召喚士』って言い方は古いな、俺は『妖精の合成士』だ!」
どうして16歳の男である俺が銀髪幼女の姿でウサ耳のチャイナ服を装備しているのか…。
全てを失くしたあの日から幼女になって自分自身を取り戻す冒険が始まった。