聖女ちゃん線を引く。
聖女ちゃんが線を引く。
「ふぉ」
聖女ちゃんが長く線を引く。
「ふおぉ」
聖女ちゃんがながーく線を引く。
「ふおぉぉぉぉぉ」
……インク切れしないのが嬉しくてたまらないようだ。
今度は別の色のペンを持って線を引き出す。
「ふおぉぉぉ」
ひとしきり線を引いて満足したのか、ふんす。と鼻息荒くこちらを見上げる。
「すごい!」
「良かったねぇ」
「こんな すばらしい ものを くれるとか きょーすけ すごい」
……全部で500円くらいなんだが。
話聞いてると、聖典の写本とか魔術の巻物とか書くの大変なようだ。紙にペンは引っかかるし、インクは染みになるしと。
なるほどね。
「さて、書いてみようか」
あ、い、う、え、お……。
五十音表を書いていく。
「もじ おおい!」
ひらがな46文字に濁音半濁音で+25、それに拗音と長音。
この段階で既に大半の言語より多いんだよねぇ。表音文字だから発音記号が無いのは楽なんだけどね。
「これがひらがな」
「ひらがな」
「かたかなというものもあるから倍」
「ばい……!」
「そこに漢字を1000個くらい」
「せ せん……!」
ツェツィリーちゃんは戦慄してぱたりと倒れた。
「まー、順番にね。とりあえずひらがなちゃんと覚えよう」
むくり、と起き上がる。
「はい きょーすけ なまえ かきたい」
俺かよ。うへへ。
ノートに『きょーすけ』と書き、隣に『つぇつぃりー』とも書いておく。
「はい、こっちがきょーすけ、隣がつぇつぃりーだよ」