聖女ちゃんノートとペンをもらう。
「じゃーちょっと出かける前に勉強する?」
「いいの?」
俺は頷き、ツェツィリーちゃんをちゃぶ台の前に座るよう促す。
筆記用具を取り出して、えーと……。
「向こうの世界ってさ、どういう筆記用具使ってたの?」
ツェツィリーちゃんは頬に手を当てて考えるようにして言う。
「せんたんを とがらせ きざみを いれた はね すみ ひつじのかわの かみ」
羽ペンとインクと羊皮紙か。
「やすいのは すみと うすくきった き」
木片に書いていたってところかな。
うーん。ボールペンとノートでいいか。割と趣味であるし、塾講師やってるのもあり、文房具は割と取り揃えてあるのだ。生徒との話のネタにしやすいしね。
練習用だし安いのがいいか……。『エトランジェ・ディ・コスタリカ』のノートを収納から何冊か引っ張り出す。
「ツェツィリー、練習用何色がいい?」
「ふぇ? じゃあ…… みずいろ!」
「青好きなの?」
ツェツィリーちゃんは頷く。
ふむ、ペンはー……。『UNI』のゲルインクボールペンにしよう。黒、赤、青と3本掴んでノートと共にちゃぶ台の上に。
「ツェツィリー、じゃあこれ使って練習しようね」
「ありがと ございます」
ツェツィリーちゃんは机の上を見渡して言う。
「すみ つぼは ない?」
「使わなくても文字が書ける」
俺は黒のペンのキャップを外し、ノートの1枚目に『つぇつぃりー』と書いて渡した。
ツェツィリーちゃんはぷるぷると震えだしてノートとペンを頭上に掲げてから胸に抱き抱えて言った。
「かがくぎじゅちゅ すごい……!」