聖女ちゃんあんぱん食べる。
洗濯機を回し、籠手とブーツを窓の外に。大体乾いてるけど風に当てておこう。
で、洗濯が終わるまでに時間があいたので……。
「パン食べる?」
「そんなに おなか すいてないよ」
「じゃあ半分なら?」
ツェツィリーちゃんはおなかに手を当てて考え、言った。
「……たべたい」
「じゃー今、あんパン半分こしてさ。夜、俺が仕事行ってる時にでもチョココロネ食べてなよ」
「うん」
と言うわけで、ツェツィリーちゃんにパック牛乳を渡し、ちゃぶ台に座らせる。
俺は台所であんパンを包丁で半分に。『こみねベーカリー』のあんパンは生地が薄く、あんがぎっしりとつまっている。
皿にのせて持っていく。
ツェツィリーちゃんはまじまじとパンの断面を見て、首をこてんと倒した。
「これ くさってる?」
ん?ああ、あんこって黒いから、知らないとそう見えるかもね。
「大丈夫、こういう色の食べ物だよ。匂い嗅いでみれば腐ってないの分かるでしょ」
すんすん。
ツェツィリーちゃんがおそるおそる鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
「あまい かおり」
うん。俺は頷きつつ、あんパンをかじる。パンの香ばしい香りが鼻に、あんの甘みが口に広がっていく。
ツェツィリーちゃんもおそるおそる一口かじった。
もぐもぐ口を動かしているうちにくわっと目が見開かれ、もう一口かじる。
しばし口が動き、ごくりとのどがパンを飲み込むために動く。
そしてゆっくりと口を開いた。
「……あんぱん …………かみ」
神ではないが。