聖女ちゃんはゆるす。
「申し訳ございませんでした!」
………………。
「きょーすけ かおあげて こたえてください」
頭上より声がする。
「はいっ!」
俺が顔を上げるとツェツィリーちゃんも床に膝をつき、目線を合わせてきた。まだ顔は赤い。
「あの みずの まほう わたしを はずかしめる ものですか? しょうじきに」
「め、滅相も御座いません!一般的なものです!」
「あれがふつう…………!」
戦慄を覚えた表情をされる。
「ごふじょうに いくたび あの まほう うける ふつう……!」
ウォシュレット使わずにトイレットペーパーだけ使えば良いのではと思わなくも無いが、そこは口に出さない。
「きょーすけ あれ つかいますか?」
「はい!」
「むむむ わかりました きょーすけ うそついてない ゆるします」
「ありがとうございます!」
ふう……。許された。
「ツェツィリーに朝食を用意させていただいてもよろしいでしょうか。簡単なものですが」
「ごこうじょう かんしゃいたします」
彼女はお腹のあたりをおさえて言った。
「じつは おなか ぺこぺこです」
「すぐできます!」
さてさて。手を洗い、先にオーブンを温めておく。食パンを2枚、軽く切れ込みを入れておいて、少し表面を水で濡らす。
オーブンにイン。その間にトマトをスライス。面倒だから皮など剥かぬ。
平皿に並べて、乾燥バジル。岩塩をミルでゴリゴリしながらかけて、あとはオリーブオイルがあるな。たらーっと。
――チン。
パンが焼けた。マーガリンだけさっと塗って、えーと、ジャムは……武蔵小山商店街の『カルディ』で買ったフルッタ・チェレスティーナのオレンジマーマレードを出しておく。
飲み物は牛乳でいいか。あとはバナナがあるな。半分に切って出そう。
「はい、できました!」