聖女ちゃん洗濯機を知る。
そのタオル言い値で買おう!というおっさんの声の幻聴を頭から追いやり、タオルを受け取る。
「洗濯をします」
「はい!」
「浄化の魔法こそないが……洗濯そのものは非常に楽です。
そう、科学技術のおかげで」
「なるほど」
……残念、言ってくれなかったか。
風呂場の入り口の脇にある腰の高さくらいの箱の前に連れていき、声をかける。
「これが洗濯機」
「せんたくき」
注水ボタンを押してふたをあける。
水がじゃぼじゃぼと銀色の筒の中に注がれる様子を興味深そうに見つめる。
ツェツィリーちゃんの汗を拭いたタオルをそこに落とす。
「ここに せんたくもの いれる?」
「そう」
かごを持ってきて俺とツェツィリーちゃんの服を投下。
昨日の夜に風呂から出た後、風呂場に俺の靴下とパンツを浸け置きしていたので、それも持ってきて入れる。
同じく浸け置きしていた布団カバーとツェツィリーちゃんの血塗れだった服も入れてしまおう。多分ほぼ落ちたと思うんだけどねー。
ツェツィリーちゃんの下着……こういうの本当は洗濯ネットに入れないとダメだよな。今度買ってこよう。
棚から液体洗剤を取り出す。
「で、これが洗剤。このふたの線のとこまで液をはかって洗濯機に入れる」
くるりと円を描くように洗濯物に洗剤を回しかけて、出ている水でふたを洗う。
ツェツィリーちゃんの視線が俺の手元を追っている。
水が止まり、ごうんごうんと音を立てて洗濯機のドラムが回転を始めた。
「ぐるぐるしだした」
「うん。回転の力で洗ってくれる。後は待つだけ」
ぱたりとふたを閉じた。
「すごい かがくぎじゅちゅ」
くっ、時間差。