聖女ちゃんとお持ち帰り。
え、これ出しっぱなしなの?
「え、マジで?」
「てへっ………… ごめんなさい」
可愛く言ってもダメである。ツェツィリーちゃんをじっと見つめていると謝ってくれたが……どーすんだこれ。
「今ここの魔力使っちゃったって話だけど、回復するの?」
例えば一日一回使えるならこの角をここに隠して置いていってもいいよね。
ツェツィリーちゃんはしばし考えて言った。
「ここ しんいき しんこう あつまれば」
……ってことは使えるとしても1月の初詣と9月の両社祭の後か。ダメだな。
持って帰るしかないかぁ。
角に手を添える。金属のような質感だな。そして重い……!
鹿の角とかインテリアになってるやつ、大きさの割には軽いなっていう印象だったが、そう言うのとは違うわ。
「これ、価値あるって言ってたけど何に使うの?」
「さいりょうの まけん まじょう そざい
けずりかす れいやく そざい」
魔剣や魔杖に霊薬……くっそ、ファンタジーに生きてやがるが魔剣とか言われても使い道に困るんだよなぁ。
「杖に加工して、ツェツィリーがここでも魔法使えたりしないの?」
「ぞくせい ちがう わたし このつえ つかえない」
ツェツィリーちゃんが使えそうなのは話聞いてると信仰とか水・海の力か。まあこれ、どうみても聖女の杖というより魔法使いの杖って感じだよなぁ。属性は闇とか邪とかそんな感じ。
「持って帰るか……」
「……ん」
屈み込み腰を入れて、重くて太い根本側を持ち上げて肩に担ぐ。んがっ、重っ。
ツェツィリーちゃんが俺の手からパンの袋を取り、角の先端に引っ掛けてそちら側を担ぐ。
2人で柱か何か担いでるように見えるだろうか……。
「とりあえず人通りが少なそうな道を選んで家に帰るよ」
「はい」
わっしょいわっしょい。