聖女ちゃんお参りする。
正面鳥居の前に立つ。
「鳥居は神様の家の玄関」
「とりい げんかん」
「だからくぐる前に礼」
「おはよ ございます」
2人で頭を下げる。
狭い境内だ。入ってすぐ左の手水舎へ。龍を模した青銅の像から水が流れている。
「これは手水。神様の前に行く前に身を清める」
「ちょうず…… あびる?」
「浴びない。手を洗ったり、口をすすぐ……真似して」
「わかった」
ツェツィリーちゃんは見よう見まねで両手と口をすすぐ。
ポケットからミニタオルを出して手を拭かせる。
「で、えーとお賽銭か」
ぐ、5円や10円玉がない……。さすがに1円玉はケチ臭いよな。100円玉を2枚取り出して1枚をツェツィリーちゃんに渡す。
「これは?」
「お賽銭。……お金。寄付する?」
ツェツィリーちゃんは小首を傾げて俺を見上げる。
「いいの?」
「いいよ」
「ありがと」
本殿の前に並んで立つ。
「この建物の中に神様がいて、それは見られない。ここからお祈りする」
「うん」
「お賽銭を入れる」
2人で100円玉をちゃりんと投げ入れる。
「おもしろい はこ」
「で、紐を揺らして上の鐘を鳴らす」
ガラガラガラ。
「ふぇー かみさまをよんでる?」
ガラガラガラガラガラ。
「2回お辞儀」
深く頭を下げる。
「手を2回叩く」
パンパン。
ぱんぱん。
「で、手を合わせてお祈り。終わったらもう一度お辞儀」
手を合わせる。
……神様か。特に信じてもいなかったけど、ツェツィリーちゃんがここに神聖な力があるというと、ありがたい気がする。
八幡様、八百万の神の中にツェツィリーちゃんの信仰するなまこの神がいるというなら……彼女をここに連れてきてくれたことに感謝をお伝え下さい。
そして彼女がここで上手くやっていけますように。