聖女ちゃんの目的地。
朝の住宅街を歩いていく。
ツェツィリーちゃんは真剣な表情で前を見て歩く。先ほどまでとは違い、気楽に散歩しているとは思えぬ表情。
アーケードから真っ直ぐ1ブロック前へ、そして左に折れる。
「…………ここだ」
ツェツィリーちゃんが呟き立ち止まる。
「何が?」
「かすかに…… かすかに せいじょうなる けはいを かんじた」
うむ……神社ですね。
こちらは神社の横手にいるので、角を折れて正面の鳥居側へと回る。
「ここは なんですか?」
「神社だね。三谷八幡神社」
「さんやはち まんじじゃー?」
切るところが違う。あとまんじじゃーではない。
「三谷、八幡、神社」
「さんや はちまん じんじゃ」
うん。
武蔵小山の住宅街のど真ん中に小ぶりな神社があるのだ。小さい神社だが、となり駅の西小山の『小山八幡神社』の分社であるらしく、毎年9月に合同で盛大にお祭りをやっている。
んで。
「ここに来たかった?」
「はい ここはなんですか?」
「えーと、三谷はこのあたりの昔の地名、八幡は神様の種類みたいなもので、神社は神様の住む場所かな」
「このせかい かみさま いる?」
うーん…………。
「分からない。この世界に魔法とかないし、神様の姿は誰も見られないしね。
昔は世界中で色々な神様が信仰されてたけど、今は本気で信じている人は少ないかなあ」
「はちまんさま? かみは いない? ふざい? しんこうは そんざいする…… ちからは どこへ……」
ツェツィリーちゃんが呟き、考える。
「俺たちはあまり信心深くない。でも神を祀る習慣は残っているんだよね。中に入ってみる?」
「いいの?」
「大丈夫」