聖女ちゃん電車に興味ある。
俺たちはぶらりと路地を抜けて、昨日パンツ買った『セブンイレブン』の脇を抜け、『小山台高校』の横の狭い道を通って駅前へ。
駅周辺はさすがに人も多い。駅に向かって皆が足早に歩いている。
ツェツィリーちゃんは彼らを眺めて言った。
「みんな いそがしそう?」
「仕事に向かっているとこだね」
「みんな したに むかう なぜ?」
彼らは皆、武蔵小山駅へとエスカレーターを降りていく。
武蔵小山駅の改札は地下1階、ホームは地下2階だ。東急目黒線は地上駅と地下駅があるが、このあたりの区間は地下である。
うーん、電車を説明……。
「自動車見たじゃない?」
「みた」
ツェツィリーちゃんが頷く。
「あれの大きいのが地下を走ってて、みんなそれに乗って仕事に行く」
「じどうしゃの おとうさん……」
「うーん、まあそんな感じ」
「わたしも のれる?」
ツェツィリーちゃんが甘えるようにこちらを見上げる。
まー、もうちょっと文明に慣れてからだよなぁ。
「見ると大きくて驚くから、もうちょっと慣れたら一緒に乗ろうね」
「ん!」
ツェツィリーちゃんが嬉しそうに頷いた。
「科学技術に」
「かがくぎじゅちゅに」
ほっこり。
武蔵小山商店街は駅から東側がメインだが、南にも伸びている。
まだほとんどの店のシャッターが降りている商店街を南へ、駅へ向かう人の流れに逆走して歩く。
26号線の信号を渡っても、まだアーケードは続く。だが、この先は地面がタイルでは無くアスファルトになり、全体的にはちょっと寂れた感じになるのである。
そこに、『パン工房こみね』があるのだ。