聖女ちゃんウォシュレットに負ける。
さすがにうちのトイレに音楽が流れる機能は無いのでね。洗面所にいるとトイレの音がよく聞こえてしまって申し訳ないので、せめてキッチンへと移動する。
えーと、『パン工房こみね』で買った食パンが残ってるな。他に何かあったかな……。
がさごそと冷蔵庫を漁る。
料理は作らんでも無いが、しょせん男の一人暮らしだしな。大したものが出来るわけじゃあない。
野菜がトマトしかねーな。せめてスライスして出すか。
「ふぁっ!?ひぇぇぇぇーーー」
トイレから悲鳴が。
…………うん、ウォシュレット初めてですよねぇ。
「ふぅ…………ひゃぁぁぁーーー」
…………ビデですかね。
「ぁぁあっ あっあの! もうきれい! もうだいじょぶですから!」
……ん?
先ほどの自分の説明を思い出す。
(用を足します。ここを押すとお尻を洗います。こちらは前を洗います。この紙で拭いて下さい)
あ。……ウォシュレットの止め方説明してない!
「ちがう! うごかすじゃない! うごかすいいです!」
あー……2回押すとムーブ機能になるよねー……。
「きょーすけ! たすけて! とめて!」
急いでトイレの前に行き、ドアをノックする。
「そのオレンジのボタン押して!」
「あっ オレンジなに!? わからない きょーすけ!」
オレンジは日本語じゃないから分からない!?
「赤! 橙色! 押して!」
シャーー……ウィーン…………。
「あっ とまった…………」
カラカラカラ。ガサガサ……。ジャーー。
俺は部屋に戻り、床に正座する。
ガチャリ。
部屋の入り口。顔を真っ赤にし、涙目になったツェツィリーちゃんがこちらを睨む。
俺は全身全霊を籠めてDOGEZAを行った。