聖女ちゃんお話を聞く。
くずかごを差し出し、ツェツィリーちゃんが汗を拭いたティッシュを捨てる。
俺の脳内で『そのティッシュ、言い値で買おう!』と言う邪悪なおっさんがよぎったが、そんなことはしないのである。
「さて、食べながらで良いのでちょっと聞いてくれ」
「はい」
「俺のバイト……仕事と金の話だ」
俺は大学生の就職活動の時期に親父が病気で倒れたりとか色々トラブルがあったのと、そもそもそこまでマジメに就活やってなかったのもあって就職に失敗したのである。
で、今は仕事探しつつフリーターをやっている。個別指導塾の講師だ。
コマ給90分1700円で一日3コマ、5100円で週5回。バイトリーダー的な事もあり、ちょっとプラスあるのとちょこちょこ事務の手伝いもしているから月収11万くらいか。夏期講習とかの時期は仕事時間も増えてもっと入る。
実はこのアパートは親戚のものであり、家賃は安くして貰った上で親持ちだ。家賃無ければこれで充分生活が出来ていた。
…………一人暮らしならな。二人暮らしだと当然足りない。
仕事は夕方からだ。基本的に夕方の5時から9時半。今日もこの時間。
まあそんなことを分かりそうなとこだけ掻い摘まんで話す。
「きょーすけは せんせい」
「先生の真似事みたいなやつだ」
「えらい?」
「えらくない」
ふーむ。とツェツィリーちゃんが悩む。
「もんだいてん なにある?」
「色々あるが……」
色々あるが、極論どうにもならなければ実家帰って農家継ぐという手もあるしな。なんとでもなるといえばなる。
「とりあえず今日は仕事があるという事だね。
昨日、ツェツィリーが寝た時間より帰りが遅いし、君の夕飯とかもどうしようかってとこか」