聖女ちゃん寝かせてお風呂へ。
もー。はぁとため息をつき、ツェツィリーちゃんに挨拶する。
「まあ、お風呂入ってきます。お休みツェツィリー」
「おやすみなさい きょーすけ」
「電気消して……暗くしていい?」
ツェツィリーちゃんはベッドの端に寝なおす。
「はい」
……うーん。俺はベッドのそばにより、枕をツェツィリーちゃんの方へと押し出す。
「ほら、せめて枕使って」
「ありがと」
ツェツィリーちゃんは枕の端にちょこんと頭をのせてこちらを見上げた。
同じ枕を使えと……。
「じゃあね、お休み」
「おやすみ」
壁際のスイッチを押し、電気が消える。
ツェツィリーちゃんの美しい顔は闇に隠れ、キッチンの明かりが部屋の一部を照らすのみ。
俺は服を脱ぎ捨てて風呂場の扉を閉める。
「ぐぬぁー……」
シャワーを出し、全身に湯を受ける。いや、身体を洗うとかどうでも良いんだ。やっと一人の時間が取れたのが重要だ。
今日1日、昂ぶり続けた気持ちを落ち着ける儀式を行う。
煩悩を吐き出して賢者に転職する儀式だ。
煩悩を吐き出すためには通常、煩悩を引き出すための書籍や画像が必要であるが、もはや俺には無用のものかもしれない。
うん、今日という1日を振り返れば良い。
「ツェツィリー……ツェツィリー……」
彼女の名を呟く。くそっ、とんだ聖女ちゃんだよ。
自分でもちょっと驚くくらいの量の煩悩が吐き出された。
今日1日俺の中で燻っていた焦燥感のようなものが無くなり、軽い倦怠感が身を包む。
俺は煩悩を排水口へと流して、身体を洗うと、賢者としての余裕ある気持ちで湯船に浸かった。