聖女ちゃんが抱きつく。
「いや、文化も違うし何とも言えないんだけどさ。ちょっと無防備に接触多いかなと」
「いや だった?」
彼女の瞳が揺れる。
「嫌じゃない。ツェツィリーは凄い可愛い、魅力的だ。
だけどさ……俺がツェツィリーを見捨てると思って気を惹こうとしているなら、それは不要だよ」
なんなら、ここに滞在する対価を身体で払おうとしてないかってことだ。
いやさ、確かにここに来る前が苦しい戦いの日々だったこともあるだろうし、縋るものない異世界で優しくされたというのもあるだろう。
ツェツィリーちゃんが俺に好意を持ってくれているというのは間違いないとは思う。……多分。
でもさ、正直凡庸な容姿だぜ?最初俺を魔法使いと思ったかもしれんが、外に出て俺が特別ではない、この世界ではどこにでもいる存在というのも分かったはずだ。
「きょーすけ やさしい わたし なにも かえせない」
ゴトリと音がした。ツェツィリーちゃんが床に籠手を下ろした音だ。
「お金のこと?」
「おかねも こころも」
うーん、ツェツィリーちゃんが稼ぐのは簡単なんだよ。ヘンな話、異世界人と大々的に宣言すればそれだけでいける。
それはきっと彼女を世界一のセレブにするという意味であり、俺の願望かもしれないが、その生活を彼女が求めるとも思わないんだけどね。
「大したことじゃない。お金はその気になれば返せる。心なんて返す必要すら無い」
「なぜ? わたし きょーすけから やすらぎと しあわせ えた」
「ツェツィリーが来てくれて、俺も喜びと幸せを得ているからだ」
……ぬぁっ!なんかクサいセリフ言った!
ツェツィリーちゃんは顔を紅潮させ、満面の笑みを浮かべる。そして彼女は俺に飛びつくように抱きついてきた。