聖女ちゃんこの世界を語る。
「ゆたかな まち すすんだ ぎじゅちゅ」
ん、うん。
「たべもの おいしい きょーすけ やさしい」
「はは、ありがとう」
2人で籠手を磨きながら話す。このナックルの金属、鉄とかじゃない気もするんだよなぁ。明らかに強度に対して軽さがおかしい。
「わたし めだつ ぎじゅちゅ じょーしき ちがう」
「うん」
「きょーすけ…… わたし ここで なに できる?」
……やはりそこだよな。
「このふく しょくじ きょーすけ はらう たいか わたし はらってない」
「対価を求めてはいない」
「きょーすけ やさしい でもそれは いびつ」
いびつ、歪か。まあそうだな。ツェツィリーちゃんは良い子だ。であるからこそ、そこは気になるだろう。
「分かった。対価はいつか貰う。だが焦らなくて良い。俺からの借りにしておけよ」
ツェツィリーちゃんが頷く。だが納得はしてない動きだな。
「借りが返せる気がしない?」
彼女は再び頷いた。
ツェツィリーちゃんの立場で考えればまあ、その帰着は良くわかる。中世ファンタジー的に身分証明がない、つまりジプシーのような流民的な存在か追放者だ。
言語もあいまい、地域の知識も常識も分からない。真っ当な職に就くのは難しいと思っているだろう。
例えば買い物の時、俺は現金で払っていたが……別の客がカードやらスマホで払っているやレジの機械に驚き困惑していた。
…………んー。
「ツェツィリー」
俺は手を止めて彼女の顔を見る。
「はい」
「ツェツィリーは俺を誘惑している?」
「!? …………なんっ えっ …………えぅ うぅ」
彼女は驚き、否定しようとし、俺から目を逸らし、固まった。