聖女ちゃん嘘の経歴を語る。
えへへーと、ツェツィリーちゃんが照れる。
「どこの国から留学に来たんですか?」
「えん どにえすとる きょうわこく から きました」
店員さんが真顔になって俺を見たので、俺も言う。
「ドニエストル共和国です」
「えっとどこですか?」
「ドニエストル共和国。旧ソ連で黒海沿岸の小さな国です」
とまあ、実在するが誰もしらんであろう国の名をカバーストーリーとして言うのである。うっかりフランスとかにしてフランス語で挨拶されたり、パリの話をされると困るからな!
「へー。ロシア語を話されるんですか?」
「るーまにあご はなせます それと このくにの ことば ちょっと」
「やー、全然分からないですわー。良くそんなとこから来ましたね?」
「だから荷物遅れてるんじゃないですかねー」
「確かにー!」
はっはっはー、とまあ、雑談で仲良くなっておくのである。
「んじゃまー、シャツから選びましょうか」
ふむ。
店員さんは大学生のバイトか社員さんなのかは分からないが、コミュ力高そうだな。ここで頼んでおくか。
「あー、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう、お兄さん」
ちょっと声を落として話す。
「今、彼女ジャンパーの下がTシャツなんですが。あー、その。下着がないんですね。……ブラジャーって扱ってますか?」