聖女ちゃんとフォーク。
セットのミニサラダを食べながら待つ。
「おいしい はっぱ ひさしぶり」
ツェツィリーちゃんが俺にしか聞こえないように小さく呟く。ああ、魔界を旅していたと言ったか。
「葉っぱではなく、野菜かな。料理としてはサラダ」
「やさい おいしい」
『とすかーな』は店が狭い。それ故にカウンターと厨房の距離が近く、料理している様子が良く見えるのだ。
ツェツィリーちゃんも茹で上がった麺がザルに上げられるのを見つめている。
「お待たせ致しました、ミートソースと」
俺はツェツィリーちゃんの方を指さす。
「アスパラとベーコンの生クリームです」
二人の前にスパゲティが置かれる。
さて、俺は彼女に見えるように、ゆっくりとクリームと麺の境目あたりにフォークを軽く突き刺し、くるくると回転させて麺を巻き取り口へと運ぶ。
うん。おいしい。
ツェツィリーちゃんは頷き、気合いを入れて麺にフォークを突き入れ、くるくると回転させ、回転させ…………。
「フォークを差し込み過ぎ」
どんどん大きくなっていく渦を作りながら、困ったような視線で助けを求めるツェツィリーちゃんの手を止める。
右手を伸ばして彼女のフォークに手を添え、軽く逆回転させて麺から抜く。
「もっと軽く」
「かるく……」
フォークの先端を麺に差し込み1回転。そこで手を離すと、ツェツィリーちゃんはそのままくるくるとフォークを回し、きれいに一口分を巻き取った。
嬉しそうな自慢そうな表情で俺を見上げ、フォークに巻かれたスパゲティを視線の高さに持ち上げて俺に見せるツェツィリーちゃん。
写真に残しておきたい表情。
タイトルは『上手に巻けましたー』だな。