聖女ちゃん車と遭遇する。
石河翠さんからレビューいただきました!
ヽξ˚⊿˚)ξノあざますのー!
車が1台正面から近づいてきた。トヨタの白いセダン。
ツェツィリーちゃんは向かってくるそれを見て、腰を落として拳を構えた。
この子はここで避けたり驚く前に、戦おうとするのか。
俺は彼女の両肩に手を置き、道路の端に引き寄せる。
「ツェツィリー、敵は、いない」
「てき いない……」
ゆっくりとそう呟き、少し身を強張らせつつも手を下ろす。
車とすれ違う。運転席にいた見知らぬおっさんが軽く片手を上げていったので頷いておく。
住宅街をゆっくりと走り去る車を見送り、ツェツィリーちゃんが呟く。
「じぶんで はしる のりもの」
「うん、自動車っていう。単に車ということが多いかな」
「にたようなもの まじゅちゅちぎるど けんきゅう してた
じつようには ほどとおい」
何だって?
「魔術師ギルド?」
「まじゅちゅちぎるど」
「魔術師?」
「まじゅちゅち」
かわいいなあもう!
「きょーすけ あれも まほう ちがう?」
「うん、違う。たくさん走ってる。見る?」
「……みる」
俺が肩から手を退かすと、ツェツィリーちゃんはちょっと名残惜しそうに肩を見る。
「今から自動車がたくさん走ってる道へ行くけど、俺の隣にいれば危険はない」
「うん」
「でも走ったり飛び出すと危険」
「わかった きょーすけ となりいる」
ツェツィリーちゃんは右手を差し出してきた。
階段を降りるときも手を取った、小さい手。だが決して弱く柔らかい手ではない。
怪我は魔法で治してしまうのであろう。その手の皮膚は瑞々しく綺麗なもので、爪も切り揃えられて桜色に染まっている。
しかし手の内側、硬さを感じる。
置いてきたあのナックルのような籠手。打撃武器としても使っていたであろう杖。それを扱ってきた手だ。
……手をにぎる。
彼女は満足げに微笑んだ。